維持管理への取り組みにハウスメーカー間で差
「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」の施工にあたって、先導的モデル事業に取り組むハウスメーカーも |
今回、この維持管理・メンテナンスをテーマとして取り上げたのは、これがハウスメーカー選びの差別点になるからです。長く住み続けられる住まいづくりが重要視されてきたのは、実はここ10~15年ほど前のこと。ですから業者によって、取り組みの度合いに大きな差があると思います。
今になって「長期優良住宅」としてわかりやすいイメージが示されるようになり、「我が社は標準で対応しています」なんて宣伝文句をみるようになりましたが、こと維持管理(保証も含め)の仕組みに限ってみると、本当にきちんとした仕組みを持っているハウスメーカーはまだまだ少ないといった印象を、私は持っています。
ハウスメーカーによっては「長期メンテナンスプログラム」というものを作成し、定期的に点検を行う仕組みを作っています。長いところでは60年なんて企業もありますが、そうした仕組みをちゃんと有していて、実行できているのか確認してみることも大切です。
新築時にメンテナンス費用の概算を提示する例も
ところで、今の新築住宅の場合、メンテナンス費用ってどれくらいかかるものなんでしょうか。旭化成ホームズの場合、築後30年で400万円(建物の大きさなどによって異なる)と試算。決して安くはないですが、このように予め新築前に「これくらいかかるんですよ」と、イメージできるのは私たちにとって安心感がありますよね。大和ハウスが開発した床下点検ロボット。段差を越えたり映像を撮影できるなど多機能なのが特徴で、現在実用化に向け研究が進んでいる |
例えば、現在の新築住宅には必ず、床下の点検口がありますが、その点検口を20年後、30年後に誰が開けるのか想像してみてください。その時に、施工したハウスメーカーが確実に存在するのか、考えてみて本当に納得できるかも、ハウスメーカー選びの判断材料になると思います。
法令上の取り決めを守っている以上、現在、建てられている住宅は丈夫な建物なのだと思います。しかし、違いが最も大きく現れるのがメンテナンスの仕組みが整備され、それが確実に実行されるか、なのです。ここ10年、日本の住宅づくりはハード面で大きく進歩しましたが、今はメンテナンスの仕組みのようなソフト面に違いが現れてきています。
わが国にも維持管理をする歴史があった
冒頭で都庁の建物を悪い例としてあげましたが、日本にも長く住み続けられている住まいの事例がたくさんあることをご存じでしょうか。例えば、京都の京町屋や古民家には100年以上の歴史を持つ住宅も数多く存在します。そこでは、昔ながらの街並みが維持されていますが、そのためには地域コミュニティーや自治体が一緒になって、長い間にわたって維持管理してきた歴史があるのです。築100年以上の建物が並ぶ埼玉県川越市の街並みの様子。所有者だけでなく地域コミュニティーや自治体が維持管理を行い、保存に力を入れている |
次回は、「長期優良住宅」についてメンテナンス以外のポイントを紹介したいと思います。