長期優良住宅/長期優良住宅の基礎知識

長期優良住宅時代のメーカー選び(上)

「長期優良住宅」というと、一般的に建物が丈夫さなどハードのことを思い浮かべます。しかし本当に重要なのは維持管理の仕組みなどソフトの部分。そこで今回は維持管理を中心にハウスメーカー選びを考えます。

田中 直輝

執筆者:田中 直輝

ハウスメーカー選びガイド

皆さんは、「いい住宅ってどんなものだろう」って考えたことはありませんか。私は、「いい住宅」=「長く住み継ぐことができる住まい」だと考えています。ただ、長く住み継がれる住宅というのは、単に建物が丈夫であればいいというだけではありません。それに加えて、デザイン性や間取りの可変性、維持管理(メンテナンス)の仕組みなどといった様々な要素を考慮する必要があります。今回は、このうちメンテナンスの重要性について、皆さんと一緒に考えてみたいと思います。

東京都庁の改修に莫大な改修費用

東京都庁舎
東京都庁舎。外見は未だに立派だが、中身は雨漏りもして老朽化が進んでいる。懲りすぎたデザインが後々になって大きな問題を引き起こす事例でもある
まずは、東京都庁舎のお話から。この庁舎、今、大変なことになっていることをご存じでしょうか。完成したのは1990年12月。建築費用として約1600億円かかったといわれています。築後約20年になるわけですが、都の方針では、今後10年ほどをかけてこれを改修するということです。

雨漏りがひどいということや、設備が老朽化しているとかが改修の主な理由。その費用は、約800億円かかるとか1300億円になるとか、諸説がいわれています。いずれにせよ、財政の厳しい折、大変莫大な金額ですよね。「バブルの塔」なんて揶揄されてきた都庁舎。建て替えなんてもってのほか。「勘弁して」というのが庶民の思いではないでしょうか。

都庁が築20年程度で、早くも大規模な改修が必要となってしまったのはなぜでしょうか。施行不良もあったといわれているようですが、要するにメンテナンスをしやすい構造としていなかったということではないでしょうか。例えば雨漏りが発生しても、予め対処を施しやすくしておけば、対策も容易ですし費用も安くできたはずです。

各種報道によると、築20年も経過しているのに基本的にはオフィス環境は当時のままで設備が老朽化しているとのことです。外見はまだまだ立派ですが、中身の使い勝手は相当悪くなっているようですね。民間のオフィスビルであれば、入居者のニーズに合わせリニューアルするのでしょうが、都民の税金を使うことを考えると、リニューアルも容易ではなかったのでしょう。

住宅にも必要な維持管理の仕組み

住宅街
街には数多くの住宅がある。しかしその中で長く住み継いでいける住宅はどれくらいあるだろう
なぜ、都庁の話を紹介したのかというと、住宅の世界が今直面している問題を言い表しやすいからです。基本的にこれまで私たちが暮らしてきた住まいも、東京都庁と同じような状況にあると思いませんか。長く使えるようにする仕組みが採り入れられていませんでした。

リフォームならまだしも、これまで住宅は建てては壊し、また建てるということが行われてきました。リフォームにしてもかなりの金額が必要となることは周知のことです。適正なメンテナンスやリフォームをしながら、長く住み続けられるようにするという発想はあまりありませんでした。

日本の住宅は新築から20~30年程度で壊され、建て替えられるといいます。一方、欧米、例えばアメリカでは60年程度、イギリスでは80年以上。海外の住宅のことを取り上げるまでもないことですが、皆さんも何となく、日本の住宅の寿命の短さは感じられていると思います。欧米では維持管理をして、住宅を長く使い続けるということが、文化として定着しているのです。

外壁のヒビ
外壁にヒビが入ってしまった事例。ここから水が壁内に侵入し建物の耐久性を損なってしまうこともある
いくら新築時に立派な建物を建てても、時が経つにつれ劣化は必ず進行するものですし、住んでいる以上、様々な箇所に不具合が発生するものです。ですから、予めそうしたものを見込んだ上で、メンテナンスやリフォームを行いやすい仕組みとしておくことが、これからの住まいづくりにおいて大切なポイントになります。

日本の住宅を長寿命化しようという機運が高まっていることは、皆さんもご存じだと思います。今年6月には「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」が施行されましたが、それもその象徴の一つです。

次のページでは、その「長期優良住宅」に関するハウスメーカー選びのポイントをご説明いたします。
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