変わってきた敷引き制度
ただし、ここ数年の間に敷金に対する考え方が大きく変化しています。それに伴い、敷引き制度にもそれまでの慣習にとらわれない変化が起こっているようです。
敷金は制度や慣習に地域差がある。が、トラブルはどの地域でも起こっている。困ったときには第三者に相談してみよう |
基本的に、敷引き制度で定められた特約は、よほど不合理な内容でない限り認められています。でも、相場や状況から考えてあまりにも高額な保証金・敷引きである場合には、その特約を無効とする判決も大阪や福岡では出始めています。
例えば、2005年10月に福岡で敷金全額返還を求めた訴訟では、原告の主張を一部認め、敷引き特約で決められていたのは保証金23万円のうち75%を返還しないという特約でしたが、「25%を超える分は消費者契約法に違反するため、無効」との判決が下されています。
また、神戸でも2005年7月に敷引き特約は無効であるとして、賃貸人に対し25万円の返還を命じる判決が下されています。これは、賃借人が家賃5万6000円の部屋を保証金30万円、敷引き25万円として契約し、退去するときには残余の5万円を返還するという敷引き特約がつけられて契約し、一人で約7ヵ月間住んでいましたが、「居住年数の長短によらず一定額の負担を強いられることは合理的ではない」などの判断より、敷引き特約が「賃借人に一方的に押し付けている状況にあり、消費者契約法10条に違反している」とのことから、賃貸人に返還を命じる判決が言い渡されたのです。
入居するときから退去するときの原状回復費用を明確にしておくことは一見クリアなようにも思えますが、そこにもトラブルはあります。賃貸業界としてもこれまでダークなイメージのあった敷金問題を透明化させ、トラブルを少なくしていくことが求められているのでしょう。
今後、賃貸契約を結ぶときには、敷引き制度に関する特約をチェックし、本当に有効で妥当な設定なのかを見極める必要がありそうです。
【関連サイト】
・戻る?戻らない?敷金の基礎知識
・敷金トラブルは「契約」で防ごう