光化学スモッグとは
咳や目の痛みなどを引き起こす光化学スモッグ。晴れの日だけでなく、どんよりとした風のない日にも注意が必要です
そもそも「光化学」とは、光が引き起こす化学反応のこと。皆さんがおなじみの植物の光合成では光を使って水と二酸化炭素から炭水化物が「合成」される光化学反応の一つです。「光化学スモッグ」はこれとは逆で、光によって大気中の汚染物質が「分解」され、新たな有害物質が発生してしまいます。
スモッグ(smog)はsmoke(煙)とfog(霧)の合成語で、石炭を使っていた時代のイギリスで、煙と霧が混ざったような大気が確認されたときに作られた造語と言われています。日本も工業化が進んだ時代にsmogのような大気状態になったことがありましたが、日本では大気を汚染した企業が、同時に汚染を除去する技術を開発したため、目に見えるsmogの状態からは比較的に早く抜け出すことができました。そのため、日本では大気汚染を象徴する意味でスモッグという語を使っていますが、光化学スモッグ注意報が出たからと行って、大気が汚く煙って見えるということはありません。光化学スモッグは目に見えない分、注意が必要なのです。
光化学スモッグの原因
光化学スモッグは、光と、排気ガスに含まれる汚染物質、空気の対流(拡散)が関係して起きます。専門的な解説は、難しい化学物質名が並んでしまうため避けますが、昔習った化学反応の基本を思い出してください。物質が酸化して酸化物質ができると、酸化物質とは別の還元物質ができます。汚れた大気に光が当たることで、大気中の炭水化物や窒素化合物が分解し、人体にも有害な光化学オキシダントなどの化合物を生み出してしまうのです。
光化学スモッグの症状…目の痛み・咳・気分の悪さなど
光化学スモッグの影響を受けやすいのは、直接外気に触れる目と、空気が通る呼吸器。光化学スモッグでは目の痛みや咳、気分が悪さなどが主な症状として挙げられます。まれですが、重症化すると呼吸困難や嘔吐、頭痛や意識障害などの症状を引き起こすことがあると報告されています。
特に注意が必要なのは、アレルギーを持っている人でしょう。アレルギー性の結膜炎や喘息などの持病がある場合は症状が悪化する可能性があるので、持病のない人よりも光化学スモッグ注意報にいっそう注意を払う必要があります。
光化学スモッグの予防法・対処法
相手が粒子のインフルエンザウイルスや花粉症の場合は、市販のマスクである程度は予防することが可能です。しかし光化学スモッグの場合は相手が揮発性の低分子であるので、マスクでも予防はできません。光化学スモッグ発生時には屋外に出ないという予防法しかありません。対処法も、出てきた症状をケアする対症療法のみとなります。目やのどに異常がある場合は洗眼やうがいをし、皮膚にかゆみがある場合はシャワーなどで洗い流しましょう。呼吸困難などの重たい症状が出た場合は、病院を受診をする必要があります。
光化学スモッグは光の差さない夜には現象するため、朝の出勤時間や登校時間は心配しなくて大丈夫です。昼前から子供の帰宅時間である夕方にかけては熱中症だけでなく、光化学スモッグにも注意が必要な時間帯なのです。
また、環境省による大気汚染物質広域監視システム『そらまめ君』では、全国の大気汚染状況について、24時間情報提供がされています。光化学スモッグ注意報・警報発令情報の最新1週間のデータを地図で確認することができます。
光化学スモッグの危険性が高い日
大気と光があれば、光化学反応は常に起きています。光化学反応自体がほとんど起きない雨の日に、光化学スモッグが発生することはありません。一方で、光が差す晴れた日は、常に何らかの光化学反応が起きていることになります。汚染物質によって有害物質が発生した場合も、風があれば有害物質は大気中で拡散され、人がいる地表での濃度は減少します。一番危ないのは、うす曇りであまり雲が移動しないような日です。雲があるので紫外線量は少しは減少しますが、大気が拡散しないため地表での光化学反応による物質の堆積は増加します。快晴ではないけど雨雲はなく、どんよりとした感じで風のない日が、最も光化学スモッグが起きやすい日ということになります。地方自治体では光化学反応でできた酸化物質の濃度を測定して光化学スモッグ(光化学オキシダント)注意報を出しています。
光化学スモッグが起きやすい地域
光化学スモッグは大気中に汚染物質があることが原因で起きるため、空気のきれいな地方よりも、排気ガスなどの多い都心部でより多く発生します。高度経済成長期以降、工場などによる大規模な汚染物質の発生はありませんが、その一方で、九州内で汚染物質濃度の増加が記録されることがあります。
汚染物質が増加する原因は完全に解明されているわけでありませんが、国内ではなく、黄砂と同じく国外からの汚染物質による影響が高いと考えられています。