連日行われた機内検疫。それでも国内発症が防げなかった理由とは……?
一方、成田空港経由で入国した人が新型インフルエンザを発症しています。なぜ、検疫をすり抜けてしまったのでしょうか? インフルエンザウイルスの特徴と迅速検査の限界について解説します。
迅速検査の対象になる症状と検査内容
ジャンボジェット機には約400人が乗っています。インフルエンザが疑われる次の症状がある人に、検査の対象を絞り込みます。- 発熱
- 鼻水、鼻づまり
- 喉の痛み(咽頭痛)
- 咳
その後、迅速検査を実施します。鼻(鼻腔)と喉の両方から、綿棒を使って迅速検査用の検体を取っています。麺棒は鼻腔用に1本、喉用に1本使い、1人に対して迅速検査キットを2個使用します。鼻腔は1本の綿棒を左右に入れて2回採取します。検体を取る時に感染が疑われる人がくしゃみや咳をすることがあります。迅速検査を実施する医師や看護師は飛沫がかかるリスクにさらされているため、他の検疫官以上に防護具が重装備です。
迅速検査の判定時間は反応開始15分後。もしも迅速検査でA型陽性と判定された場合は、さらに遺伝子検査用に別に検体を採取して、詳しい検査をすることになります。
インフルエンザの潜伏期は無症状
インフルエンザウイルスを吸い込んだ場合の潜伏期は1日から1週間程度。潜伏期間は無症状です。機内検疫を受けても、発熱もなく、他の症状もないので、迅速検査の対象になりません。仮に検査をしたとしても、感染初期の迅速検査ではインフルエンザと判定できないため、いずれにしても検疫をパスしてしまうのです。迅速検査の限界
季節性のインフルエンザでも判明している事ですが、発熱などの症状が出た直後に迅速検査をしても陰性(=「インフルエンザではない」という結果)が出てしまいます。実際、成田空港での機内における迅速検査で陰性で、帰国後に受けた迅速検査で陽性となった方が、詳しい検査の結果、新型インフルエンザと判明したこともありました。以上のように、潜伏期間が無症状という新型インフルエンザの性質と、潜伏期間での判断は難しい迅速検査の限界についてを知っておく必要があります。将来、海外で別の強毒性の新型インフルエンザが発生した場合、今回の経験が役に立ちそうです。