インフルエンザ/インフルエンザワクチンの予防接種

インフルエンザ予防接種の基礎知識

インフルエンザウイルスの予防には手洗い、うがいだけでなく、予防接種も有効。予防接種の効果や費用、新型インフルエンザワクチンが接種できる場所について、まとめました。

清益 功浩

執筆者:清益 功浩

医師 / 家庭の医学ガイド

インフルエンザ対策に有効と考えられている、ウイルス増殖を抑える薬とワクチン。新型インフルエンザが心配だけど、予防接種はした方がいいの? 費用はどれくらいかかる? 持病がなくても受けられる? など、今回はインフルエンザワクチンの予防接種の疑問にお答えします。

新型インフルエンザと季節性インフルエンザの違い

新型インフルエンザも季節性インフルエンザも、出る症状は非常に似ています。インフルエンザウイルスは主に気道上皮に感染し、咳や鼻、唾液を介してヒトからヒトにうつります。主な症状は、以下の通り。

  • 突然の38℃以上の発熱
  • 咳、くしゃみ
  • 頭痛
  • 関節痛
  • 全身倦怠感

新型インフルエンザが季節性インフルエンザと大きく異なる点は、ヒトに抗体が無いために感染力が強く、大流行を起こす恐れがあることです。症状としては不明な部分も多いですが、新型インフルエンザウイルスに対する予防法として、ワクチンがあります。(参考「アトピーとインフルエンザ」)
 

インフルエンザの予防法

マスクは口と鼻をある程度ガードできるので、パーフェクトではありませんが、ウイルスの侵入を最小限に抑えられます。また、咳や唾液の飛散を防ぐので自分がウイルスを持っていた場合の感染拡大を予防できます。手洗いとうがいと合わせると感染を防ぐには有効な方法です。さらに、妊婦や子供、持病を持っている人など、インフルエンザ感染で重篤化する恐れがある人は、あらかじめ予防接種を受けることも検討できます。
 

大量生産できないのはなぜ?
インフルエンザワクチンの製法と効果

合併症を防ぐために予防方法としてはワクチンが有効。

合併症を防ぐための予防法として有効なワクチン。しかし量産するのが難しい事情もあります

少し専門的なお話になりますが、インフルエンザワクチンは、日本では鶏卵から作らています。鶏卵でワクチン株のインフルエンザを増殖させ、ウイルスを精製濃縮し、卵の成分を除きます。さらにできたウイルスを分解し、HA(ヘマグルチニン)というウイルスの成分だけを取り出して、体に抗体を作るためのワクチンを作り出しています。

鶏卵を使用するため、製造には数ヶ月以上の時間が必要になります。鶏卵に頼らない培養細胞を使ったワクチン開発なら、一度に大量のワクチンが製造できますが、日本ではまだその段階には至っていません。(参考「卵アレルギーにインフルエンザワクチンは?」)

実は、新型インフルエンザの予防接種の効果はまだはっきりしていません。文字通り新しい型のウイルスですので、通常のインフルエンザと同等の効果があるのかはこれから明らかになる部分です。季節性インフルエンザの場合は、ワクチンの効果は100%ではないものの、重症化、死亡の防止について一定の効果が確認されています。

季節性インフルエンザの場合、65歳未満の健常者で70~90%の発病を抑え、65歳以上の健常高齢者の入院や肺炎を30~70%抑えます。施設入所65歳以上高齢者の死亡は、80%抑えることができます。ただし、子供では効果が悪く、1歳~6歳までの子供の発熱を20~30%程度しか抑えられません。(出典:Morbidity and Mortality Weekly Report (MMWR)2007vol56,CDC)

一方、インフルエンザワクチンを予防接種していたからと言って、感染しないわけではありません。感染防止と流行の阻止の効果は期待できないのです。メリットはあくまでもかかってしまった場合の発症をどれだけ防ぎ、症状をどれだけ軽く抑えられるかという点です。この点を誤解しないようにしましょう。

インフルエンザワクチンの予防接種方法

現時点では、13歳以上の場合、新型インフルエンザは1回、季節性インフルエンザは1回予防接種となりました。13歳以上でも中高生は現時点ではまだ2回です。子どもの場合は1回の接種量が少なく抗体ができにくいので、原則2回接種が必要です。

  • 3歳未満……0.25ml
  • 3歳以上……0.5ml
で、1~4週の間隔で接種します。できれば抗体を上げるには、3~4週空けて接種する方がいいでしょう。

インフルエンザワクチンの安全性

新型インフルエンザワクチンは、従来の季節性インフルエンザと同じ製法ですので、安全性については季節性とほぼ同程度と考えられています。副作用が起こるのは10000人当たり0.01913人と非常に少ないです。副作用の種類としては、39度以上発熱が14.9%と多く、全身の発疹が10.4%。アナフィラキシーや蕁麻疹、痙攣、脳炎などの重篤な副作用は10%以下です。

一方、輸入ワクチンは、国内での使用経験のない免疫補助剤と使用経験のない細胞株を用いた細胞培養による製造法が用いられていますが、海外での有効性、安全性は報告されています。
 

インフルエンザワクチンの優先順位

従来の季節性インフルエンザには、A型/ソ連型(H1N1)、A型/香港型(H3N2)とB型が含まれていましたが、新型インフルエンザワクチンではブタ由来のA型(H1N1)のみです。両方にかぶりがないため、これからの季節にインフルエンザで重症化するのを防ぐためには、季節性と新型インフルエンザ両方を予防接種をする必要があります。

季節性ワクチンにA型/ソ連型(H1N1)が入っていますが、新型のブタ由来のA型(H1N1)には効果がありません。現在、新型では抗体を持っているヒトが非常に少ないため、3~8週間あけて2回接種することが推奨されています。この新型ワクチン、国内生産では1400万~1700万分しか確保できないと言われていましたが、来年3月まで2700万人に上方修正されました。
そのため、限られたワクチンは、上記の通り、ワクチンは、重症化、死亡の阻止に効果がありますから、重症化しやすいヒトから優先される事になります。厚生労働省の計画では、現時点では以下の通り優先順位が定められています。

  1. 救急隊員を含む医療従事者                 約100万人
  2. 妊婦・基礎疾患を有する者                  約1000万人
  3. 子供(1歳から就学前)                    約600万人 
  4. 1歳未満の子供のもつ両親                  約200万人
  5. 小中高校生                           約1400万人
  6. 65歳以上の高齢者                      約2100万人

小学校低学年も優先されるようです。
計5400万人がワクチンの対象です。基礎疾患とは、喘息などの呼吸器疾患、狭心症などの心疾患、慢性腎炎や透析を行っている人などの腎疾患、慢性肝炎、肝硬変などの肝疾患、神経疾患、神経筋疾患、血液疾患、糖尿病などの代謝性疾患、AIDSや悪性腫瘍、抗がん剤の治療中などの免疫抑制状態があることです。
 

インフルエンザワクチンの費用

自費診療ですので、医療機関によって異なります。従来の季節性インフルエンザでは1回2000円~4000円、2回の場合は割安にしている所もあります。住んでいる自治体によっては補助を出していますので、自治体や自治体のホームページで確認しておきます。新型インフルエンザの場合は、2回の接種費用として1回目が3600円、2回目が2550円と決まりました。
 

インフルエンザワクチンを接種できる医療機関

従来の季節性なら大抵の小児科・内科の医療機関でできますが、事前に確認しておきましょう。例えば、皮膚科や眼科などの医療機関では、予防接種を行っていないことが多いです。一方、新型は医療機関を限定する動きがみられます。詳しく厚生労働省インフルエンザ対策関連情報で確認しておきましょう。

流行状況は、国立感染症研究所感染症情報センターパンデミック(大流行)(H1N1)2009で確認できますので、住んでいる地域での流行状況を見ておきましょう。

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