インスリン「ランタス」に発がん性の疑い?

インスリン・ランタスに発がん性の疑い? 詳しく解説します

インスリン・ランタスに発がん性の疑い? 詳しく解説します

まだ確定的なことではありませんが、インスリン・アナログの「ランタス」(一般名グラルギン)がある条件の下でがんの進行を促進する可能性があるという発表がありました。

なにしろ世界中で年間34億米ドル(3,200億円)もの売上げがあるという、屈指のベストセラー・インスリンですから、各国の糖尿病治療の現場に衝撃が走りました。

投与量に比例? ランタスとがんの関連

まず無用の心配を避けるために、今回の研究から見えてきたものを先にお知らせしましょう。どうもランタスとがんの関連は一日の投与量に比例するようなのです。
つまり、1日の基礎インスリンとしてランタスを50ユニット以上注射するような人は、1日10ユニットぐらいの人に比べて統計上は有意にガンのリスクが高くなるようなのです。しかし基礎インスリンを50ユニットも使う人はそれほどいるわけではありませんから、まずは一安心。

インスリンの働きと細胞の関係

そもそもランタスを始めとするインスリン・アナログ(類似品)が正常細胞をがん化するといった根拠は今のところ何もありません。一方でインスリンそのものが細胞分裂を促進する働きがあるので、未発見のガン細胞が既にあればそれを促進する可能性は否定できません。粉末インスリンを吸い込んで肺から吸収するエクスベラ(Exubera)が残念ながら撤退した時も同じ問題に直面しました。

インスリン・アナログというのはヒト・インスリンと構造を少し変えて超速効型にしたり、持続型にしたものですが、それによってヒト・インスリンよりもがん細胞の成長を強める可能性があることを指摘した論文はすでにありました。

しかし、実際に人体に影響があるかどうかを人体で積極的に研究することは、倫理上できません。それゆえ、今回の研究のように13万人の糖尿病者のデータを2001年1月から2005年6月まで「後ろ向きに」研究した結果が大きな話題になったのです。

発がん性の「疑い」があるものを、私たちはどう活用すべきか

今回の論文は2009年6月26日にヨーロッパ糖尿病学会の学会誌Diabetologiaオンライン版で発表になりました。日本をはじめとして世界各国の糖尿病協会は「現在インスリンを使用中の人は、自分自身の判断でインスリンの使用を中止しないように」と呼びかけています。

不確実な事柄ですが大切な問題であります。ある研究者は、がんのリスクが高い人はヒト・インスリンのR(レギュラー)やNPH(中間型)に切り替える選択肢も考えるべきだとしています。つまり、ガンの既往症のある、あるいはがん治療中の糖尿病者や、乳がんの可能性が高い家族歴や高齢の女性ではヒト・インスリンにするのはひとつの選択だという意見です。この考え方は説得力がありますね。ご参考までに。
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