ED(勃起不全・勃起障害)は、仕事上の悩みや家庭内の問題によるストレスが引き金となる「心因性」と、体そのものになんらかの原因がある「器質性」とに大別されます。

「器質性」には、糖尿病、高血圧症、脂質異常症(高脂血症)などの生活習慣病が大きく影響しているといわれています。いずれも、勃起と深く関わる血管にダメージを与え、血流を妨げる動脈硬化を招くからです。

また、直腸や膀胱、前立腺といった骨盤内にある臓器への外科手術によって、勃起に関係する神経が傷つけられたり、切除されたりすることが原因となる場合もあります。

骨盤内の臓器でも、特に、前立腺の近くには勃起に関係する神経が通っているので、手術は慎重を期して行われます。

今回は、前立腺の働きに焦点を合わせて、EDとの関わりを考えてみましょう。

そもそも、前立腺って何? 

「膀胱の前にある腺」に由来する男性特有の器官

「膀胱の前にある腺」に由来する男性特有の器官

前立腺は「膀胱の前にある腺」という意味で名づけられた男性特有の器官です。栗の実ほどの大きさで、その中を尿道が通っています。

前立腺の最も大切な働きは、精液を構成する成分の1つである前立腺液を尿道に分泌することです。前立腺液は精子を運ぶと共に、精子に栄養を与える役目を担っています。弱い酸性である膣の中で精子の活動が衰えないようにする保護液としての機能もあります。

このように、前立腺は生殖機能に関係する器官ですから、働き出すのは思春期以降です。20歳ごろをピークに、30歳くらいまで、睾丸から出る男性ホルモンの作用で働きます。

しかし、生殖年齢の男性にとって大切な前立腺も、その役目を終えると、肥大して尿道をふさいだり、がんを発生させたりして健康を脅かすことがあります。

ほとんどの男性が前立腺肥大に 

さまざまな排尿障害を引き起こす前立腺肥大症

さまざまな排尿障害を引き起こす前立腺肥大症

前立腺の病気というと、前立腺肥大を思い浮かべる人が多いでしょう。40歳ごろから始まり、60歳代の7割、80歳以上では8割にみられる、典型的な加齢症状です。つまり、ほとんどの男性が経験することになるのです。

前立腺肥大と似た言葉で、混同されやすいのが前立腺肥大症です。前立腺肥大は、前立腺の尿道周辺部の組織が過剰に増殖して大きくなる、一種の良性腫瘍です。

これに対し、前立腺肥大症は、肥大によって尿道が圧迫されることで起こる、さまざまな排尿障害を指します。

代表的なものに、頻尿や残尿感、排尿痛などの「尿意を感じやすくなる症状」と、尿の出始めや終了に時間がかかる、溜まっているのに出せない、勢いが弱いといった「尿が出にくくなる症状」とがあります。2つの症状を総称して「下部尿路症状」と呼びます。

EDの危険因子となることも 

欧米7カ国の地域住民1万人を対象とした調査によると、下部尿路症状がEDを引き起こす危険度は糖尿病の約2倍でした。これには、骨盤内の虚血(局所的な貧血)が関係していると考えられています。

下部尿路症状の原因の1つでもある前立腺肥大症を治療すると、勃起機能が改善することが明らかにされています。治療には、薬物療法や手術が有効で、回復した勃起機能をより確かなものにするためには、シアリス、バイアグラ、レビトラなどのED治療薬が役立ちます。

前立腺肥大や前立腺がんが疑われたときの診断には、直腸内を指で確かめる直腸内指診が欠かせません。直腸内指診は、肛門から直腸内に指を挿入し、前立腺に直接触れて形や硬さ、大きさなどを判断するために行われます。

前立腺マッサージとは

前立腺がんなどで、手術をする場合には、前立腺の近くを通る、勃起に関係する神経を傷つけないように細心の注意が払われます。

最近は、術後に勃起障害を残さないよう、勃起に関係する神経をできるだけ温存する方法がとられています。前立腺は、そこを刺激することで、射精を促すことがあるほど、勃起に深く関わる場所でもあるからです。

前立腺のこうした特徴を性生活に取り入れようという考え方で行われているのが「前立腺マッサージ」です。

ですが、実際に体内に指を入れるので、滅菌したメディカルグローブを使うなど、衛生面には細心の注意が必要なため、おすすめはできません。

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