うつ病/高齢者のうつ病・老年期うつ病・介護うつ

どう見分ける? 老年期うつ病の特徴・原因・症状

老年期は、うつ病の好発年齢ですが、うつ病による心身の不調を「年のせい」として、うつ病を見過ごしやすく、未治療のうつ病は、60歳以上での1万人を越える自殺者数とも結びついています。老年期のうつ病の要因、症状の特徴を詳しく解説します。

中嶋 泰憲

執筆者:中嶋 泰憲

医師 / メンタルヘルスガイド

うつ病

老年期はうつ病の好発年齢です。心身の不調を年のせいと早合点するのは禁物です!

うつ病に対する社会的認知は一昔前とは比較にならないほど高まりましたが、うつ病の症状自体には個人差があるもの。「うつ病ではないか?」と、疑ってかからないと見落としやすい病気です。特に年配の方は、いつもとは違う症状があっても自他ともに年齢のせいだと判断してしまいがちで、うつ病を見落としてしまうことも少なくありません。

今回は老年期のうつ病の特徴、原因、症状について詳しく解説します。

老年期のうつ病の特徴・原因

うつ病は子供から年配の方にまで見られる病気で、老年期のうつ病と他の年代のうつ病との間に本質的な違いはありません。加齢自体もうつ病のリスクではないのですが、老年期では他の年代よりも高率で、(統計ごとに数字に幅がありますが)20%以上の人にうつ病が見られます。

老年期にうつ病が高率になる原因として、老年期には、うつ病のきっかけとなりやすい環境的、心理的要因があることが挙げられます。例えば、「長年寄り添った配偶者に先立たれた」「自分の健康状態が思わしくない」など。精神的にも肉体的にも活力が落ちているのに、苦悩は増すばかりです。その上、うつ症状を年齢のせいにされて家族からも取り合ってもらえず、未治療のままになりやすいことも大きな問題です。

うつ病は早期に治療すれば、比較的容易に治癒する病気ですが、未治療のまま放っておくと、自殺リスクのある深刻な病気に変わってしまいます。実際、平成19年の統計では、総自殺者数33093人中、年齢層別には、60歳以上の年齢層が12107人と最多になっています。自殺者の大部分は自殺の時点で、うつ状態になっていることが分っています。うつ病を見逃さないことは、自殺予防の決め手といっても過言ではありません。

老年期のうつ病の症状

老年者のうつ病でも、他の年代のうつ病と同じく、以下のような、うつ病の一般的特徴があります。
  • 気持ちが冴えず、今まで楽しめていたことが楽しめない
  • 集中力の低下
  • 意欲の低下
  • 疲れやすい
  • 死にたい気持ちが生じる
  • 夜中に何度も目が覚めてしまう、朝早く目が覚める
  • 食欲低下
老年期のうつ病に見られやすい症状としては、体の不調(痛み、しびれ、胃や胸部の不快感など)の訴えが多く、また、「自分は周りのみんなに迷惑ばかりかけている」「ガンなどの悪い病気にかかっているのではないか」など、過剰に心配する傾向があります。家族に対して怒鳴ったり、あれをしてこれをしてと要求が多くなり、ご家族が当惑してしまう事は少なくありません。また、うつに伴う活動性や記憶力の低下が、認知症のように見えるときもあります。

老年期のうつ病は一般的なうつ病と同じく抗うつ薬で症状はよくなります。うつ病の予後を良好にする重要な要素は、できるだけ早く治療を開始することです。「うつ」を年齢のせいと早合点しないためにも、うつへのアンテナは常に高めておいてください。
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