子宮頸がんワクチンについて
早期発見が重要です。婦人科での定期的な検診をお勧めします。 |
A:上記の質問を受けて、前回は子宮頸がん全般についてご説明しました。子宮頸がんのワクチン1 子宮頸がんについて
子宮頸がんは、前回ご説明しましたように、HPV(Human Papilloma Virus、ヒトパピローマウイルス)というウイルスの感染が原因です。それゆえ、子宮頸部の細胞にHPVが感染するのを防ぎ、ガン化しないようにするためにワクチンを接種するのです。
子宮頸がんのワクチン接種は、諸外国では国が推奨したり、公費負担をしている状況です。
例えば、オーストラリアでは、12~13歳女子を対象にした学校での接種をはじめ、接種できなかった人などにキャッチアップ期間として26歳まで全額公費で行っているようです。
その他、対象年齢は12~18歳ぐらいまでとまちまちですが、イギリス、イタリア、フランス、ノルウェー、ドイツ、ルクセンブルグ、スイス、ベルギー、デンマーク、カナダ、アメリカなどの国では、公費負担や保険による接種が可能です。
ここで、なぜ、女性のみ接種なのかというと、HPVによる子宮頸部細胞のようなガン化は、ほとんどが女性にみられるからです(注:男性の可能性は全くゼロではありません)。
また、対象年齢が10代前半の理由は、性行為経験年齢に到達する前に接種するためです。前回ご紹介しましたように、HPVは皮膚の上に普通に存在しているウイルスですので、性行為経験のある人は、誰でもなりえる可能性があります。それは、性行為などにより、発がん性の高いHPVが子宮頸部に感染し、免疫や新陳代謝などで排出されなかった場合の、さらに0.1%程度の人が数年から10数年かけてガン化するためです。
それゆえ、子宮頸部の感染や感染によるガン化を防ぐ目的で、性行為を経験する前に接種することが望ましいのです。
なお、成人女性やこれまでに子宮頸部の細胞異常があった場合でも、今後の新たなHPV感染予防の意味も含めて、ワクチンの接種が望ましいといわれています。
子宮頸がんワクチン
現在、日本では申請中ですが、グラクソ・スミスクライン社と、メルク社(日本では万有製薬)が開発、販売をしています。(それぞれ、海外の商品名は「Cervarix:サーバリックス」、「Gardasil:ガーダシル」です。)両社の製品は、対象のウイルスやワクチンに含まれる免疫増強剤(アジュバンド)、接種スケジュールに多少の違いがあるものの、発がん性が高く進行が早いことから、20-30代の子宮頸がんで最も多くみられるHPVの16型、18型が対象となっています。(注:Gardasilは、HPV6,11にも対象ですが、この二つの型に発がん性はありません。)
ワクチンは、1クール(半年)で3回の接種となり、自費診療で、1回8,000~10,000円程度、1クールで約3万円になるようです。1クールの接種で、10年程度の効果があるようですが、現在、ワクチン接種から8~9年程度の効果が確認されており、さらに長期の効果についてもデータが蓄積されつつあります。
ワクチンについて
ワクチンを接種すると逆に、そのウイルスに感染してしまうのではないかという懸念が今でもあるようですが、このワクチンは、サブユニットワクチンというウイルスのDNAが存在しない製法で作られているため、ワクチン接種による感染リスクは全くありません。※サブユニットワクチン:バイオテクノロジーによって、ウイルスの中から抗原として有効に働く部分のみを生成したワクチン。内部にDNAが存在しないため、接種により感染やそのウイルスの増殖もみられない。
注)日本でのワクチンの製法は、以下が主流です。
・弱毒化ワクチン:ウイルスを細胞培養液の中で好ましくない条件下で複製させて、毒性を弱くしているワクチン。
・不活化ワクチン:ウイルスを適切な条件化で複製・増殖させ、熱や化学物質で処理して毒性がなくなるようにしているワクチン。
最後に…
日本では、子宮頸がんで年間3,000あまりの人が、命を落としています。また、子宮頸がんの発症が多い年齢は、20代後半~30代という、妊娠・出産の時期と重なっています。
2009年9月末に、日本でもようやくワクチンが承認され、年末ぐらいには発売される運びとなりました。少しでも助かる人が増えることを心より祈っております。
もちろん、皆さま自身でも、健康診断や産婦人科での定期的な子宮がん検診をするなど、自分の体に気を配っていただけたらと思います。
*ネット上での診断・相談は診察ができないことから行えません。この記事は実際の薬局などでの会話をもとに構成したものです。相談が必要な方は、医師や薬剤師に実際にお聞きください。