認知症ケアの切り札と呼ばれるグループホーム。認知症の症状などを抱えるお年寄りが少人数で暮らす、小規模共同住宅です。可能な限り自立した生活を営むことができ、なおかつ家庭的な雰囲気で暮らせるため、認知症の進行防止効果が謳われてきました。ところが、ここへきて期待とは裏腹に、さまざまな問題が起こりつつあります。さて、その問題とはいったい・・・?
ケアの質低下が心配されている?
現在、急激にその数は増えており、平成12年には全国で672施設でしたが、平成16年には5436施設となっています。
建設ラッシュの背景にあるのは、住宅メーカーや建設会社、銀行などの後押し。特別養護老人ホームや老人保健施設は、社会福祉法人、医療法人などでなければ開設できませんが、グループホームは法人格であればOK。マンションやアパートに比べ、入退居が少ないため、経営者は長期的な安定収益を見込むことができます。おかげで、一部地域では介護保険財政を圧迫するほど供給過多に。
増加にともない、心配されているのが「ケアの質低下」。独立行政法人国民生活センターによる調査報告書によれば、グループホーム職員の給与額は、15万円から20万円未満が46.6%と最も多く、15万円未満の職員も27%と少なくありません。さらに、オンブズマン(利用者の権利擁護活動をする第三者)を受け入れている施設はたった14.6%。少人数の施設は密室化しやすいだけに、適切なケアがおこなわれているかどうかが問題視されています。
「料金が高いから退所した」3割
数が増えたのはよいのですが、入居はなかなか難しいのが実態。なぜなら、一般に利用料金が高いからです。上記の調査報告書によれば、グループホーム退居の理由として「利用者・家族の経済的理由」を挙げた人は27%と、およそ3割にのぼっています。もっとも多かった「病気治療」(73.9%)に次いで、第2位という結果になりました。
また、グループホームの利用料金について調べたところ、総額で最も多かったのは、13万円台で13.5%。8万円台~12万円台は9~10%台、14万円台と15万円台は7~8%。また、なかには2万円未満や20万円以上のホーム(2.6%) もあり、格差はかなり大きいことがわかりました。さらに、入居金を徴収している施設は24.3%と、およそ4分の1に達しています。
グループホームの利用にかかる費用の内訳は、介護保険制度での1割負担のほか、家賃、食費など。とくに土地代の高い都内などでは、その分、コストもつりあがる傾向にあります。ちなみに厚生年金受給者の平均年金月額は、老齢年金で17万1000円(平成15年度末現在)。なかには、入居費用をまかなえないからと住民票を移し、近郊の神奈川県や千葉県、埼玉県などの施設に入居する人もいるほどです。
さて、いかがでしょう。理想の介護が実現できるはずのグループホームですが、ちょっと気がかりな点も増えてきましたね。利用者側としては、安心できるケアを、もっと低価格で提供してもらいたいものです。
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