年をとると失禁しやすくなるのは自然なこと。これは、尿道の括約筋という筋肉の力が衰えるため。また、尿意もあまり感じなくなり、トイレのタイミングを逃してしまいがちです。ですからいたずらに嘆かず、おおらかな気持ちで失禁を受け入れることが大切。とはいえ、予防はもちろん、失禁後のニオイケアは欠かすことができません。効果的に消臭するには、どうしたらよいのでしょう。体臭治療を専門とする五味クリニック院長 五味常明先生にお伺いしました!
「尿に含まれる尿素はそもそも無臭。分解されてアンモニアになるとにおいが発生します。ですから時間をおかず、ただちに処理するようにしましょう」と五味先生。それでは、具体的にはどのように処理すればよいのでしょうか。シチュエーションごとにアドバイスをいただきました。
失禁してしまったら
床や畳に失禁!ニオイは染込まない?
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「アルカリ性のアンモニア臭を消すには、酸性の物質で中和させるのが一番。湿らせた雑巾に酢などを含ませて拭き取りましょう。濡らした茶ガラをまいても効果的。茶のカテキンが消臭効果を発揮します。カーペットに失禁してしまった場合は、乾燥させたお茶ガラを使ってください。また、トイレ内での失禁には重曹が一番。濡れ雑巾に含ませて床を拭けば、においはきれいになくなりますよ」
フローリング | 湿らせた雑巾に酢を含ませてふく |
湿らせた茶殻をまく | |
カーペット・畳 | 乾燥させた茶殻をまく |
トイレ | 湿らせた雑巾に重曹を含ませてふく |
陰部ケア
失禁後、陰部のケアはどうすればいいの?トイレットペーパーなどで拭き取るだけではダメかしら・・・
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「陰部はその都度、きれいに洗っておきましょう。石鹸はアルカリ性でなく、弱酸性のものがおすすめです。洗面器のお湯にキャップ1杯の酢やレモン汁を入れ、下半身を拭いても効果的ですよ」
陰部のケア | 弱酸性の石鹸で洗浄 |
洗面器のお湯にキャップ1杯の酢・レモン汁を入れてふく |
オムツ処理
尿や便のついたオムツを上手に処理するには?
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「オムツをしている場合に注意したいのが、便と尿がついたものの処理。放置しておくと、便の中の酵素が尿素分解を早め、強烈な悪臭と化してしまいます。外したらすぐ始末するようにしましょう。高分子ポリマーや消臭繊維のオムツを使うのもいいですね」
寝具の防水
寝具にニオイがついたら大変。しっかり防水したいのだけれど・・・
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「寝具の上には防臭加工シーツを敷き、さらに防水シートや尿取りシートを重ね敷きするとよいでしょう。最近発売されている、酵素を使った消臭毛布やバイオ消臭シートもおすすめですよ」。
失禁を予防するために
最近、失禁癖がついてきた・・・?もうオムツをつけなくてはダメかしら
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「失禁は常習化しないよう、早めに食い止める努力が大切です。なんとなくそわそわしているな、と思ったら、『そろそろトイレに行きませんか?』などと、こちらから声をかけるようにしましょう。日ごろ、いつどんなときに排尿しているかという『おしっこ記録』をつけておくと、うまく時間やタイミングを見計らうことができるようになりますよ」
正しいニオイケアをすれば、介護する方もされる方も快適に生活できます。お部屋にしみつく前に、きちんと処理したいものですね。
五味常明先生 五味クリニック院長。一ツ橋大学商学部、昭和大学医学部卒業。昭和大学形成外科等で形成外科学、および多摩病院精神科等で精神医学を専攻。患者の心のケアを基本にしながら外科的手法を組み合わせる「心療外科」を新しい医学分野として提唱。体臭・多汗治療の現場で実践。ワキガの治療法として、患者が手術結果を確認できる「直視下剥離法(五味法)」を確立。Vや雑誌でも活躍中。 99年からは、ケアマネージャー(介護支援専門員)として、デイケア事業や、高齢者介護の現場でのニオイのケアにも取り組む。 五味クリニック |
【参考文献】
介護・臭いで困っていませんか 講談社 (五味常明・須藤章 著)
【関連ガイドリンク集】