/インフルエンザ治療薬…タミフル・リレンザ・イナビル

臨床医が考えるインフルエンザの治療法(3ページ目)

インフルエンザの治療というと、タミフルとリレンザが頭に浮かびますが、一般的な風邪とは異なり抗菌薬も投与されることがあります。臨床の現場で行うインフルエンザ感染症の治療法についてご説明します。

執筆者:吉國 友和

その他に検討される治療法

抗インフルエンザ薬が話題を占めやすいのですが、症状が出現して48時間を越えた場合にはいずれの薬剤も使用は推奨されません。3つ目のポイントは、病院で行うことのある、その他の対処法をご説明します。
  • 抗菌薬(抗生物質)を使用……一般的な風邪のウイルスには抗菌薬は無効ですが、インフルエンザ感染時には例外的に抗菌薬が有用なことがあります。肺炎などの合併症を起こす頻度が高いため、年齢によっては予防効果につながるのかもしれません(風邪のときには、抗菌薬が肺炎を予防する効果はないとされています)。
  • 補液(点滴)治療……腕から行う一般的な点滴は、脱水を改善するために行います。栄養やカロリーはほとんど入っておらず、多いものでも250キロカロリーぐらいです。食欲不振時のビタミン不足解消を期待して、ビタミン剤を点滴に入れることもあります。
  • 解熱鎮痛剤……発熱や関節痛などの症状を緩和するために使用することがあります。小児ではインフルエンザ感染時にアスピリンなどの一般的な解熱鎮痛剤を使用すると、重篤な脳症や肝機能障害(ライ症候群)を併発する危険性が高まることから、解熱鎮痛剤の中でもアセトアミノフェン(商品名:カロナール®、アンヒバ®など)という種類のみが使用されます。成人でも同様の懸念からアセトアミノフェンが選択されることがあります。ちなみに、アスピリンは名前こそ「ピリン」がついていますが、ピリン系薬剤ではありません。
いずれの治療法もあくまでも対症療法ですし、抗菌薬の投与が推奨されない場合もありますが、インフルエンザは通常の風邪とは区別して扱うべき病気です。

保険適応とならない個室料(差額ベッド代)!

インフルエンザは感染力が強いウイルスであり、飛沫感染の他にも空気感染を起こす可能性も危惧されています。このため原則としては自宅での治療となりますが、重篤あるいは合併症のために入院が必要となった場合、他の患者さんへ感染を起こさないために、原則として個室隔離が必要となります。ところが、個室料金については医療保険適応とならず全額自己負担となりますので、個室料金が必要な医療機関では入院費用も高額になりがちです。

個室料金は1日毎に設定されますので、実際の入院期間が気になるところです。おおまかには、解熱してから更に2日間程度が目安となります。これはインフルエンザウイルスが完全に排出されなくなるまでの期間に相当します。正確には、例えばタミフル®を用いた場合、投与後も2日間はウイルスが排出されるのですが、これは人に感染を起こすことのない変異したウイルスであるとされています。

しかし、一般的な医療機関では変異したウイルスなのかどうかを確認することはできません。このため、解熱後2日間程度は個室での管理が必要と判断されることがありますので、状態が良ければ早めに退院許可を得て、自宅で安静を保つことも自己負担額を抑える手段です。


インフルエンザが怖いのは肺炎や脳症を併発することがあり、一般的な風邪と比べて致死率が高いことです(人類がこれまでに経験したインフルエンザの致死率は、高い場合には3%前後であったと考えられています)。現行のインフルエンザについては、ワクチンの予防接種、手洗い・洗顔・うがい、マスクをしてできるだけ人混みを避けることです。いざという時に備えて、今からでも間に合う対策を練っておきましょう。


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