アレルギー/黄砂アレルギー

もはや風物詩ではない! 黄砂の対策を

花粉症の季節が過ぎたのにアレルギーの症状が続くという方、黄砂が影響しているのかもしれません。例年はこれからピークをむかえる黄砂の飛来、あなたの健康にも関わる問題です。

執筆者:吉國 友和

昨年ほどの大規模なものではありませんが、今年も黄砂が飛散しています。先日、この黄砂の影響について「サンデー毎日(4月8日発売号)」にコメントをさせていただきました。黄砂は何となく体に悪いかもしれないけれど、どんなものかあまり実感できないという方も多いのではないでしょうか。


黄砂が含む有害物質、人体への影響は?

アレルギー症状
花粉症の季節、黄砂が舞うと同じような症状が出ることも?!
黄砂はアジア大陸内部の砂漠や乾燥地帯の砂塵が強風によって舞い上げられ、日本では春を中心に風に乗って降り注ぐ現象(あるいは砂塵そのもの)です。今に始まった現象ではありませんが、20世紀半ばを過ぎて大気汚染が顕著となった現在では、黄砂と一緒に大気中の有害物質も運ばれてきています。

まだ医学的には黄砂の影響とは証明されてはいないのですが、ガイドの経験として黄砂が多く降ってきた日やその翌日に咳や痰、気管支喘息の発作が生じた患者さんを診療したことがあります。非常に難しい問題なのですが、ちょうど黄砂の舞う季節には風邪や花粉症も流行することもありますから、仮に呼吸器系の症状が悪化したとしても、それが黄砂を原因としているのかを断定することができないのです。

また、黄砂にはごく微量ながら鉛などの重金属も含まれています。可能性は非常に低いと思うのですが、肺の毛細血管を通して人体へ少しずつ蓄積すると、将来こうした金属に対する慢性中毒症状が現れるということも完全には否定できません。


同じ春の風物詩(?)の花粉、黄砂との違い

春はアレルギー性鼻炎・アレルギー性結膜炎、いわゆる花粉症の季節でもあり、同じアレルギー性疾患である気管支喘息も悪化する傾向があるのですが、それぞれの原因となる物質にはどのような違いがあるでしょうか?

まず、スギ花粉ですが、20~30μmぐらいの大きさでペクチン(多糖類)や蛋白質で構成されています。本来のアレルギーとはこうした蛋白質が体内で分解されたペプチドに対して生じる、過剰な免疫反応を指します(注意:近年問題となっている金属アレルギーなどの特殊な病態は別としてお考えください)。

これに対して、黄砂は主に石英、長石などの鉱物、ケイ素(原子記号Si)やアルミニウム、鉄などを主体とする砂そのものと言えますが、日本で観測される黄砂の多くは小さな粒子(1~4μm程度)であり、一度上空に舞い上がって風に乗って降り注ぎますので、その途中で大気汚染の成分である硫酸イオンや硝酸イオン、あるいは鉛(なまり)までも含んでしまうことになります。このような蛋白質ではない物質が直接アレルギー反応を起こす可能性は少ないのですが、黄砂の粒子はスギ花粉に比べて小さいだけに、その中でも比較的小さなサイズの粒子は肺のスミズミにまで到達し、広範囲で慢性的な炎症を起こすことも考えられます。

また、黄砂が日本に届くまでには大気中のカビや細菌の毒素LPS(リポポリサッカライド)を含むこともあり、そうした成分によってアレルギー反応が生じ、気管支喘息化を悪化させているとも考えられます。


次のページでは黄砂の対策をご紹介します。
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