わが国の糖尿病研究をリードする慈恵会医科大学(東京・港区)の研究者たちが2型糖尿病者にマグネシウムサプリメントとして『にがり』を投与したところ、明らかにインスリン抵抗性(インスリンの作用が悪くなること)が軽減することが分かりました。
それだけでなく、血しょう中性脂肪値も下がりましたし、高血圧症のある人には血圧降下も認められました。
糖尿病者は血しょう中のマグネシウム濃度が低いことは1952年に報告されていますから、かなり昔から知られていました。その後、動物実験でマグネシウム補給がインスリン抵抗性をよくしたり、2型糖尿病の予防あるいは遅延に結びつき、マグネシウムの欠乏が高血糖を招くことも分かりました。
今回の『にがり』はオーストラリア産
慈恵会医大の研究は男性6人、女性3人の軽症の2型糖尿病に1日あたり100mgあるいは300mg相当の塩化マグネシウムを含むにがりを水で薄めて30日間服用したものです。『MAG21』というにがりで、オーストラリアのパースの北東にある"デボラ湖"のかん水で、100mlあたりマグネシウムを10,300mgも含むという大変なものです。
ところでマグネシウムはからだの中でどんな働きをするのでしょうか。生命活動には『酵素』が欠かせませんが、マグネシウムは300を超える酵素に必要なミネラルとされています。たとえば、インスリンが細胞表面の受容体に結合すると、すぐにでもインスリンを運び入れるドアが開くような場面がNHKの"ためしてガッテン"などに出てきますが、実際には多くの仕組みが係わっています。特にチロシン・キナーゼという酵素が大切なのですが、この酵素の活性がマグネシウムと関連があるのです。
糖尿病者は高血糖が続くとブドウ糖を排出するために多尿になります。その時に大切なミネラル類も体外に排出してしまいます。
マグネシウムが不足するとインスリンの作用が悪くなって(インスリン抵抗性)さらに高血糖を招きます。
その他にも高血圧薬の利尿剤やアルコール飲料、コルチコステロイドやエストロゲンのようなホルモン剤などのいろいろな薬もマグネシウムの排出に作用することが知られています。
なぜサプリが必要?
マグネシウムを食品だけで十分に取ろうとすると、糖尿病者には難問が待ち受けています。なぜなら、高マグネシウム食品とは、ピーナッツ、ヒマワリの種、アーモンド、ハシバミの実、大豆、パルメザンチーズ、カシューナッツ、チョコレート、ココア、ドライフルーツなどの『高カロリー食品』が目白押しで、2型糖尿病にたくさん食べるように勧めるものではありません。だからアメリカでは糖尿病者にはいろいろなサプリが薦められているのです。
今回の研究で『にがり』も有力なマグネシウムサプリメントであることが分かったようです。
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