2001年アメリカで発表された『糖尿病予防プログラム』はとても明るい展望を示してくれました。
これは、生活習慣改善と血糖降下剤と、どちらがより有効に糖尿病を予防できるかを調べたものです。
これによると、体重を5%~7%減らして1日30分の速歩ウォーキングを実行すると、糖尿病の発症を58%も減らせることが分りました。
この研究の『目玉』は特に糖尿病になりやすい人達を対象にしたことです。
すなわち、全員が既に『耐糖能障害=境界型糖尿病』があり、肥満で(平均BMI34)、70%の人に糖尿病の家族歴がありました。また、罹病率の高いアフリカ系、ヒスパニック系、アジア系、アメリカ原住民などの少数民族が45%を占め、25歳の若者から85歳の高齢者、妊娠糖尿病のキャリアのある女性など考え得る限り最強の『糖尿病スーパー予備群』です。
3,000人以上のボランティアを無作為に3分しました。1つは減量とエクササイズの『生活習慣改善』グループ。もう1つは血糖降下剤『メトフォルミン』を服用するグループ。残りが対照群としてプラシーボ(偽薬)を与えられたグループです。
通常は『耐糖能障害』の人は、毎年6%ぐらいが真性の糖尿病に進行するのですが、この研究の対象者はハイリスクの人たちばかりなので、何もしなかった人たちは毎年10%ずつ糖尿病になってしまいました。
ところが、5%~7%の減量と1日30分のウォーキングを実行した人達は半分以上も少なかったのです。
もちろん、これらの人達が完全に予防できた訳ではありません。発症が遅延したのが事実なのですが、その分だけ糖尿病合併症の痛みや障害から遠くなったのはうれしいことです。
プラシーボとは本物そっくりに作られた偽薬で何の作用もありません。処方する医師も患者もそれと知らずに服用します。それによって本物の薬や他の療法の効果が客観的に評価できるのです。
血糖降下剤『メトフォルミン』グループは対照群に対して31%の発症減少がみられました。これも糖尿病予防に効果が立証できた立派な成績です。この薬は肥満のある者には明らかに有効でしたが高齢者やあまり太っていない人にはさほどではありませんでした。