糖尿病一歩前の「糖尿病予備軍」からは、まだ脱出可能!
「このままでは糖尿病になると言われてしまった……」 まだ諦める必要はありません。プレ糖尿病からは脱出が加納なのです
この時点でなるべく早くライフスタイルを改めれば「時計の針」を元に戻すことも可能です。「ついに糖尿病か……」と諦める前に、がんばる意味はありますね。
この糖尿病一歩前の診断基準は国際的に定まっていますが、一般には「糖尿病の可能性を否定できない人」を指します(厚生労働省の糖尿病実態調査より)。ちょっと定義が広いですね。具体的には「A1C 5.6%以上、6.1%未満」の人を意味します。A1Cについては、過去記事「そもそもA1Cって何?」をご参照ください。厳密にいうと、A1Cは人によって違う部分が大きいので、これだけで糖尿病の危険度は判定できないのですが……。この記事ではこの境界型の定義から見ていきましょう。
一つ確認しておきたいのは、「境界型糖尿病」という糖尿病はないということです。日本でいう「境界型」とは、正常値よりは血糖値が高いが、糖尿病とは診断できないというゾーンのことで、高血糖の判定区分の一つなのです。病名ではありません。
しかし「境界型」、つまりボーダーラインという曖昧さにしがみついて、いつまでも糖尿病であることを自分で否定してしまう弊害があるので、この言葉は先進国ではもう使われなくなりました。ですから、アメリカでは明解なメッセージとしてプレ糖尿病とネーミングされているのです。
それでは、境界型が糖尿病になってしまう確率はどのくらいでしょうか?
糖尿病予備軍の4~6%が糖尿病に移行する
もちろん、境界型=プレ糖尿病だからと安心してはいけません。日本の境界型は、年間4~6%が2型糖尿病に悪化してしまいます。アメリカの糖尿病予防プログラムの調査によると、年間11%もの人が2型になっていました。プレ糖尿病の人は10年以内にほとんどが2型になるという研究がアメリカにあるくらいです。10年も境界型のままでいては、糖尿病になることは避けられなさそうですね。なによりも怖いのは、心臓や脳などの血管障害が、まだ糖尿病とは言えないこの段階で、すでに始まっていると分かったことです。糖尿病予備軍の人は、今はまだ病気でなくても、深刻なコンディションであることを理解しましょう。テキサス大学(米)の糖尿病部門の主任教授R.デフロンゾ(2009)によると、プレ糖尿病(耐糖能障害)の時点で患者はベータ細胞の機能の80%以上を失っていると結論づけていますし、別の学者の研究(2003)でもこの時点でベータ細胞の量が半減しているという発表がありました。
糖尿病予備軍(境界型・プレ糖尿病)の判定基準
ちょっと専門的ですが、境界型の判定基準を知っておきましょう。自分の検査の数値と照らし合わせて、自分がどの状態にいるのかを知ることも大切ですよ。2005年よりアメリカのFPGは100mg/dl以上126mg/dl未満をプレ糖尿病と判定するようになりました。
また、75gOGTT 2時間値が高い(170mg/dl~199mg/dl)人ほど糖尿病型へ移行しやすいと考えられています。
いかがですか? 境界型といっても糖尿病の発症過程のものと、実質的に糖尿病ではあるが生活改善によって改善中のものとが混在しています。医師は肥満度や家族歴などを評価して判断しますが、ここは私たち自身ががんばるところですね。