正しい対応法は?
さて、話は戻りますが、いきなり「家へ帰ります」と切り出された場合、あなたはなんと答えますか?冒頭のように、「ボケが進んじゃったんじゃないの」「おばあちゃんの家はここでしょ」
などと言いたくなる気持ちはよくわかります。しかし、頭から否定されると、お年よりは気持ちを傷つけられてしまいます。
認知症のお年よりの行動は、一見わけがわからないようでいて、じつはひとつひとつ意味を持っています。うろうろしているのは、やろうとしたことを忘れてしまうからかもしれません。「そろそろ日が暮れたわ。雨戸を閉めましょう」と立ち上がったものの「あら、何をしようとしたんだっけ」と途中でわからなくなってしまう--といった具合です。
また、認知症にかかるとまず新しいことを記憶する力から失っていきます。現在の家や家族のことを忘れてしまい、生まれ育った実家や、若い頃住んだ家のことを思い出してしまったとしても不思議はありません。だからこそ反論したり、無理に引き止めたりせず、あくまでお年よりの意志を尊重してあげることが大事なのです。
たとえば…「あら、帰るの。もう少しいいでしょう。お夕飯を食べていかない?」「もう一晩泊まっていけば。明日になったら送っていってあげますよ」といった調子です。もし時間があるときには、「それなら送りましょう」と一緒に出かけ、疲れた様子が見えたところで「今日はもう遅いですから一晩泊まっていってください」というのもよいようです。
不謹慎な言い方かもしれませんが、認知症の患者さんは少し前のことは大抵忘れてしまいます。だから、その場をなんとかやりすごせば、もう「家に帰ろう」と思ったことなど記憶から消えてしまうのです。演技派俳優になったつもりで、お年寄りの頭の中のドラマで共演してあげてください。
ただしこれは家族が夕方、家にいられる場合のこと。仕事などで外出しているときに、たそがれ症候群に陥り、ほんとうに出て行ってしまったら厄介なことになります。徘徊に発展するようなら、「もの忘れ外来」などの精神科を訪ねてみてください。カルシウム剤などを処方してもらうことで、症状を改善することができます。
また日ごろ、カルシウムたっぷりのメニューを心がけるのもいいですね。寒い季節、ホットミルクや牛乳粥などを作ってあげてはいかがでしょう。ただし、カルシウムを過剰に摂り過ぎると、かえって体に悪影響があるので、ほどほどにどうぞ。
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