前進する精子が50%未満、または、高速に運動する精子が25%未満の場合についていいます。精嚢や前立腺などの副性器に炎症があると、精子の運動性が低下することがあります。薬物で炎症を抑えることにより、運動性が回復することが期待できます。しかし、治療効果が認められない場合は、顕微授精が必要となることがあります。
●無精子症(azoospermia)
文字どおり、精子が精液中に全く見られない症例についていいます。この無精子症も、精子の通り道がただ詰まっているだけの閉塞性のものと、精子形成自体に問題がある非閉塞性のものがあります。閉塞性のものに関しては、精路再建術(注2)を用いれば自然妊娠が期待できることもあり、また、そうでなくとも、直接精巣や、精巣上体から精子を回収することもできます。
ただし、精巣や精巣上体から回収した精子は十分な運動能力を獲得しておらず、自力で卵と受精することが困難なので、顕微授精法を用います。近年の顕微授精法の普及で、閉塞性無精子症患者の妊娠率については、飛躍的に改善されています。これに対し、非閉塞性無精子症は、精子形成自体に問題があり、精子形成は活発に行われていません。
ですから、非閉塞性無精子症の場合、精巣中に精子が発見できない場合も多く、現在、男性不妊の中で最も困難な症例の一つといえます。ただ、ここ数年、精子のもとになる細胞を用いた新しい治療法なども考案されています。
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注2:手術で精子の通り道をつくりなおす方法
●死滅精子症(necrozoospermia)
精液中に精子は存在しているが全く運動精子を認めない症例についていいます。この症例は顕微授精法を行っても受精率は10%程度と非常に低いのですが、受精すれば、妊娠の可能性は期待でき、過去の報告では無事出産に至っている例もあります(Barros et al.,1997)。
●奇形精子症(teratozoospermia)
70%以上の精子が形態異常を伴うものについていいます。奇形精子は受精する能力が低いのですが、できる限り形態のよい運動精子を選んで顕微授精することで、受精させることは可能です。しかし、奇形精子症のなかには、すべての精子が円形の巨大頭部を有する症例(globozoospermia)があり、この場合、受精させるため特殊な処置を必要とすることがあります。
今回は精子についてのお話でした。次回は同じ男性不妊でも射精障害と勃起障害についてお話をしてまいりたいと思います。
(今回は越田クリニックのご協力でコンテンツ制作しております)
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