子宮のなかには、受精した卵が着床するためのベッドのような役割をする子宮内膜があります。子宮内膜細胞は身体の中でも最も細胞増殖の盛んな細胞で、エストロゲンの影響で増殖し高温期になってプロゲステロンの働きで増殖が止まります。
その本来、子宮のなかだけにあるはずの子宮内膜によく似た組織が、なんらかの原因で子宮の外側(卵巣、腹膜、直腸、膀胱など)に発生し、月経のたびに出血をくり返す病気が「子宮内膜症」です。
症状としては、強い下腹部痛、腰痛などの月経痛が約70~80%の人にみられ、痛みは年数がたつにつれ強まっていくのが特徴です。進行すると、臓器が癒着をおこすために月経以外のときにでも下腹部痛や腰痛がおこることもあり、かなりつらい症状です。そのほか、性交痛や排便痛などがみられることもあります。
target="new">子宮内膜症の部位 |
日本医師会の資料です |
子宮内膜症が発生しやすい場所は骨盤に守られている下腹部の内部で、腹膜や臓器の表面(卵巣や子宮、ダグラス窩、腸や直腸など)、卵巣の内部、子宮の筋肉層、腹膜表面から少し内部などです。まれに肺やへそなどにも発生します。
子宮内膜はご存知の通り、月経周期にともなって一定の期間増えますが、妊娠しなければはがれて月経血となり、体外に排出されます。
しかし、子宮内膜症の病変部分もそれぞれの場所で似たような変化を起こしてしまいます。まるで、お腹の中にそれぞれ傷ができたようなもので、出血したり痛み熱を発したり、さまざまな化学伝達物質を分泌したりして、炎症状態を起こしています。
target="new">子宮内膜症の断面図 |
日本医師会の資料です |
子宮内膜症と癒着の関係
そして傷を治そうとする身体の自然の働きによって、病変部分をおおうような膜が発生し、そこから癒着が始まります。臓器や腹膜は、すべて滑るような膜で独立しているからこそ、その臓器特有の働きができるのですが、臓器どうしや臓器と腹膜がくっついたりすると、その臓器特有の働きに影響が出てきます。
いったんできた癒着は薬では治癒する事はできません。よって手術ではがすしか方法はありませんが、癒着の程度や広がり、医療者の技術によって、はがせない場合もあります。子宮内膜症の手術を困難にしているのは、この癒着です。(次のページに続く)
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