中山院長先生へのインタビュー
Q)患者さんに対して気をつけているところは?
A)徹底した説明と同意を心がけています。流れ作業的な外来ではなくて患者さんの納得が得られるまで説明をしています。現状を解説して「なぜいまこの治療が必要であるか」を理解していただくようにしています。ですから初診時、15分程度じっくりとお話をすることで患者さんとのコミュニケーションをとっております。
それから出来るだけ治療期間の短縮をめざしています。患者さんが望む「自然に近い治療」にこだわることも大事ですが一方、ステップアップ治療の難しさもあります。一般不妊治療で妊娠せず、数年を得て「原因不明」のままART(生殖補助技術)へ進むことを度々経験します。
その間に費やされた労力を考えるともっとも成功率の高い方法を取るのが「専門医の良心」と考えております。ARTを第一に薦めるクリニックが増えていることは安易には喜べないですが、我々は出来る限りその患者さんに合った治療スピードと児の獲得率を考えて治療を行っております。
それから患者さん本位の診療体系をとっております。例えば、仕事を持っている方のために夜診は20時まで受付を行っており、また「二人目不妊」の患者さんのために子連れでも周囲に気を遣わずにすむよう時間帯を分けて予約を取っております。
さらに治療のタイミングを逃さぬように祝日以外の休診日は設けておりません。
Q)患者さんのメンタルサポートについてどのようにされているのか教えてください。
A)不妊治療は「ゴールの見えないマラソン」なので精神的なバックアップが欠かせないと思っています。しかし、今頑張っている人に「頑張れ」の言葉だけでは意味がないと感じています。患者さんと一緒に併走して「共感しあうこと」で夢を信じて治療を受ける気持ちにいざないたいと思います。
また私共の「共感」以上に患者さんに励みになるのは、同じ治療を受ける同志の存在です。医師に相談できないことも患者さん同士の会話や愚痴の中で解消されるものは大きいと思います。だから当院のホームページの中に設けられた「掲示板」や「患者さん主催のオフ会」はそんな彼女達にとって大切なコミュニティとなっています。
Q)貴院の検査・治療の流れを教えてください。
A)検査は基本的なものに限り、簡素にとどめています。具体的には排卵ホルモンの血液検査と卵管通過性検査、精子検査の3大基本検査だけとし、高額な割には情報量の少ない検査は行いません。
治療は患者さんの年齢と不妊期間、合併症の有無によりどのステージからエントリーするかを相談の上、決定しています。導入部分では「たとえ話」を活用して実感を持って「不妊治療」を感じてもらえるように心がけています。
たとえばこんなふうにお話ししています。
・世の中には不妊で悩む人の数より避妊で悩む人の数の方が圧倒的に多い
・目的地に行く(赤ちゃんを得る)には各駅停車、急行、特急いずれでも到
達する可能性はあるけれど、終電に間に合うように時間配分しなければならない。
・受精までの道のりは精子にとってトライアスロン。最初の水泳だけ距離を半分にするのが人工授精、最後のマラソンだけ参加するのが体外受精、決勝までのシード権があるのは顕微授精
・木になるりんごを取るには背伸びが必要な人とジャンプが必要な人とはしごが必要な人がいるが、どの高さに実るかは誰にもわからない」
次に続く