心臓・血管・血液の病気/その他の心臓・血管・血液の病気

中高年女性の胸痛 エコノミークラス症候群(2ページ目)

震災による避難生活によってエコノミークラス症候群の危険性が高まることが報告されています。エコノミークラス症候群は日常的に遭遇する可能性のある病気です。危険因子を取り除くことが予防につながります。

執筆者:吉國 友和

三者三様! エコノミークラス症候群の自覚症状

背伸びをしてリラックス
同じ姿勢を保ち続けると血流も悪くなります。ちょっとした休憩時間に体を動かして水分補給をしてください
この特徴的な症状があればエコノミークラス症候群、ということはないのですが、出現する可能性のある自覚症状を大まかな頻度を交えて以下に示します(注意:国内外の研究結果によって自覚症状の頻度には差があります)。
  • 突然発症し、持続する呼吸困難感……80%以上
  • 胸痛……40~70%
  • 咳嗽(がいそう:セキ)……30~50%
  • 何となく不安に感じる……20~60%
  • 喀血(肺・気管からの出血で血を吐くこと)……20~30%
血液の固まりが大きいほど太い血管(肺動脈)を塞いでしまい、重篤な状態に陥ってしまいますが、血液の固まりが小さい場合、例えば空咳を感じるぐらいで自然に軽快することもあります。

治療については重症度・全身の状態によって異なりますが、一般的な急性期の治療として、酸素などで全身の状態を維持しながら、血液の固まりを溶かす薬剤による血栓溶解療法・血液を固まりにくくして進行・再発を予防する抗凝固療法、カテーテルもしくは外科的に血液の固まりを取り除く治療などが行われます。

原因によっては何度も繰り返すことも多く、長期間にわたって抗凝固剤の内服や、下肢の静脈内に生じた血栓が肺内の血管に入り込んでしまわないよう、恒久的なフィルターを下大静脈内に留置するという外科的な治療法もあります。


エコノミークラス症候群の予防

残念ながら完璧な方法というものはないのですが、エコノミークラス症候群を予防するためには、原因となる血栓を作りにくい体作りをすることが必要です。つまり、糖尿病や高脂血症など動脈硬化につながる状態の解消を目指すことです。

また、運動は血流を良くする作用がありますので、発症の予防効果も期待できるのですが、私自身の経験として、運動中にエコノミークラス症候群を発症した症例を診療したことが何度かあります。これらの症例に共通していたのは、水分補給を行わずに大量の発汗を伴うような比較的激しい運動(風通しの悪い体育館内での球技・農作業など)の最中であったこと、ややふくよかな中高年の女性が大半であったということです。こうしたことを踏まえると、予防のためには水分補給と定期的な軽めの運動が必要ということになります。


次のページではエコノミークラス症候群診断のための検査を一部ご紹介します。診断のためにはいくつの検査が必要になるでしょうか?
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