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採血後の痛み…「複合性局所疼痛症候群」(2ページ目)

外傷は誰にも起きます。献血や健康診断の採血も一種の外傷です。しかし稀に、採血後の痛みが慢性化して取れないことがあります。それが採血後の「複合性局所疼痛症候群」です。

西園寺 克

執筆者:西園寺 克

医師 / 感染症・健康情報ガイド

原因:稀に「採血」などの医療行為も…

採血
採血で複合性局所疼痛症候群が起きるのは非常に稀ですが…
健康のためには避けられませんが、「外傷」を伴う医療行為の中には、採血・献血・手術などがあります。中でも腕からの採血は、最も良く行われている頻度の高い医療行為です。

採血は従来、体調が悪いときの原因を知るために行われていました。最近では企業の健康診断でも実施されています。そのため、健康な人でも採血を受ける機会が増加しています。

日本国内の年間の採血回数は、真空採血管の使用量(約8億本/年)から推定して、1回の採血で2種類の採血管を使用したと仮定すると、4億回/年となります。日本の人口は1億2000万人ですので、少し多く感じられるかもしれませんが、1人が年約3回採血した計算となります。

採血が原因での「複合性局所疼痛症候群」の発症率は不明ですが、近いものとして、日本赤十字社が実施している献血の場合、1/50万人程度が発症していると言われています。

献血と同じ発症率だとすると、医療行為による複合性局所疼痛症候群は、推定で数100人/年発生している計算となります。
運が悪かった…と諦めずに済む予防法はないのでしょうか?


予防法:採血される側でも、リスクを下げる努力

完全な予防は難しいのですが、採血時に神経を傷つけると、複合性局所疼痛症候群が起きやすくなる事は確かです。

通常の採血は肘の内側で行いますので、まず採血時には肘関節をできるだけ伸ばして、手が動かないようにしましょう。

神経(正中神経)を傷つけると、痺れや麻痺を伴う複合性局所疼痛症候群を起こす可能性が高まります。解剖学的に正中神経に近くなる小指側(尺骨側)をできるだけ避けて、中心または親指側(橈骨側)の静脈から採血を受けましょう。


症状の確認:以下の項目をチェックしましょう

採血に伴う合併症としては、皮下の出血がしばしば起きます。採血時にはなくても、後で出血が広がることがあります。この場合は皮下の出血は一週間程度で消えて後は残りません。

痛みを感じる痛点を避けて採血はできないので、採血には軽い痛みを伴います。通常は採血部位の痛みは数日すれば消えるのが普通ですが、採血時・採血後から、次のような症状が起きることがあります。当てはまるものはないか、チェックしてみてください。

□ 採血した腕が痺れた感じがする
□ 採血した部位の痛みが続く
□ 痛みが強くなる感じがする
□ 痛みの範囲が広がっている感じがする
□ 痛いので採血した側の手が動かしにくい
□ 採血後に皮膚の色が変わった感じがする
□ 採血した側の腕と採血しなかった腕の感覚が異なる
□ 採血した側の腕の温度が熱い感じがする
□ 採血した側の発汗が多い
□ 採血した側の腕が浮腫む

もし以上の症状のいくつかが慢性化してしまうと、採血に伴う複合性局所疼痛症候群という事になります。


治療法:異変を感じたら、すぐにペインクリニックへ!

採血時・採血後に経験した事がない痺れ、痛みなどの異変を感じたら、躊躇せずに申し出ましょう。もし複合性局所疼痛症候群が疑われたら、できるだけ早いうちに痛みの専門のペインクリニック外来を受診する事をお薦めします。受診が早いと後遺症が少なくなる可能性が高いからです。

採血による複合性局所疼痛症候群に関しては、医療ミスという考えから訴訟も起きています。明らかな正中神経損傷がなくても起きることがあります。採血では、合併症に関する同意書も通常取られていませんが、医療ミスではなくて、医療事故と考えるべき合併症です。
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