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採血後の痛み…「複合性局所疼痛症候群」

外傷は誰にも起きます。献血や健康診断の採血も一種の外傷です。しかし稀に、採血後の痛みが慢性化して取れないことがあります。それが採血後の「複合性局所疼痛症候群」です。

西園寺 克

執筆者:西園寺 克

医師 / 感染症・健康情報ガイド

採血後に内出血してしまった、なんて経験はありませんか? 外傷は誰にでも起きますし、献血や健康診断の採血も医療行為として避けられない外傷の一種です。
しかし稀に内出血どころでは収まらず、採血後の痛みが慢性化して取れないことがあります。それが採血後の「複合性局所疼痛症候群」と呼ばれるものです。


外傷後に痛みが慢性化すると…

痛みは大切な感覚です。痛みがあることによって、体への無理な負担が最小限にできます。体の異変を知らせるのが痛みの本来の役割です。

体のどこかをぶつけた、切った、擦りむいたなどの軽い外傷は誰でも経験するものですし、外傷による痛みは、次第に治まって行くものです。外傷の程度にもよりますが、通常、1~2週間程度で痛みは消えるでしょう。

ところが、外傷の痛みが、傷が治った後も治まらずに、長期間続くことがあります。難しい名前ですが複合性局所疼痛症候群と呼ばれるものです。なお英語ではComplex Regional Pain Syndromeですので、CRPSという略語で呼ばれます。


難治性の痛み!「複合性局所疼痛症候群」

CRPS
手に起きた複合性局所疼痛症候群では患側の手が使えなくなります。
複合性局所疼痛症候群の定義は難解ですが、外傷(骨折・打撲・捻挫など)をきっかけとして、慢性的な痛み(慢性疼痛)が起きます。慢性疼痛に加えて、局所の浮腫、皮膚温度の異常、発汗異常などの症状を伴います。

複合性局所疼痛症候群では慢性疼痛に加えて、皮膚の萎縮が起きることがあります。筋肉だけでなくて骨の萎縮(骨粗鬆症)が進行する事があります。痛みがあるので動かさないと、関節の可動性の低下による運動障害が起きます。最悪は関節の拘縮まで起きて、手足が使えない状態となります。

稀ですが、上の病態がもともとの外傷を受けた部位だけでなくて、全身に広がって行く事があります。たかが痛みといって、侮ってはいけない病態ですね。

複合性局所疼痛症候群は国際疼痛学会が決めた比較的新しい用語です。従来、反射性交感神経性ジストロフィー(RSD:Reflex Sympathetic Dystrophy)、カウザルギー(Causalgia)と呼んでいた病態も含んでいます。

>>次のページでは、採血時の複合性局所疼痛症候群の予防法と、もしもの時に何科を受診すればよいかを、ご説明します。>>
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