食と健康/食と健康の基礎知識

貧血は鉄分だけで改善する?(2ページ目)

「山」と「川」のように、「貧血には鉄分」とお決まりの言葉がありますが、これは果たして正しいのでしょうか? また、鉄分をサプリメントで補う場合、その量は多すぎ? 少なすぎ? 素朴な疑問にお答えします。

執筆者:吉國 友和

吸収量と排泄量は同じなのに血液は造られる?

男女のデート
鉄分を多く含む肉や野菜を取り分けてくれる男性はきっと優しいはずです
毎日の食事によって、男性で約1mg、女性では約2mg(詳しくは次の見出しに後述します)の鉄が毎日体内に吸収され、尿や便、汗などからほぼ同じ量の鉄が失われています。

入る分と出て行く分が等しければ血液は造られないのでは? という印象を受けますが、新しい血液を作り出すためには食事によって得られた鉄だけではなく、古くなって脾臓(ひぞう)で壊される血液に含まれる鉄分や、体内に貯蔵されている鉄分も利用されていますので、結果として鉄分の1日で吸収される量と喪失する量はほぼ完全にバランスを保っています。


女性で貧血が多い理由 50代からも?

女性の場合、月経のための出血(総量約40~50ml)によって血液に含まれる鉄分も同時に失ってしまうため(20~25mg)、食事中からの鉄分が相対的に不足してしまうと、鉄欠乏性貧血を招く要因となります。裏を返せば、もし貧血があったとしても閉経後の女性では鉄分の不足だけが原因とは限りません。

ちなみに、月経によって失う鉄分を単純に30日で割り算すると、1日当たり0.67~0.83mgですから、通常の鉄分喪失量1mgと合わせて、女性では閉経を迎えるまで毎日1.7~1.8mgの鉄分が体内に吸収されなければなりません(男性は毎日1mgです)。

食物中の鉄分がすべて吸収されるわけではありませんので、1日当たりの食事量(鉄の所要量)に換算すると、成人男性と閉経後の女性では10mg、閉経前の女性(思春期以降)ではやや多い12mg程度の鉄分を食物から摂取する必要があります(注意:妊婦さんや授乳中は更に必要です)。では、サプリメントとして用いる場合の注意点について確認してみましょう。


次のページでは治療に用いる場合の「鉄分量」についてご紹介します。
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