ダイオキシンは、合成有機化合物の中でもとくに毒性が強く、発ガン性などの影響が心配されています。魚介類は、アルツハイマー病予防に効果があるなどの健康にも貢献する一方で、私たちが食べ物から取り込むダイオキシンの量の約60%が、魚を介して取り込まれているのです。
12月2日付の朝日新聞によると、「脂が多かったり(ダイオキシンは、脂肪に溶けやすい性質をもつ、大都市周辺で取れたりした魚介類は、ダイオキシン類濃度が高い」ことが、水産庁の調査で分かりました。国の定めた安全基準(TDI)を大きく上回る種類もあり、日常口にする機会が多い魚介類を調査対象にしているため、濃度が特に高かった魚種については、追加調査で原因や汚染状況を突き止めることを検討しています。
海域別でダイオキシン類濃度が高かったのは、東京湾、大阪湾、瀬戸内海という大都市周辺で取れた魚。脂の多いマグロ類やブリも同様。最も高かったのは米国東海岸沖で取れたクロマグロ。体重50キログラムの大人が毎日20グラム(刺し身で2切れ程度)を生涯、食べ続けるとTDIを超えることになるそうです。
同じ魚種、同じ海域でも、年により濃度が異なる事例がいくつかあり、全体の濃度の平均は1グラムあたり0.748ピコ(ピコは1兆分の1グラム)で、日本人が日常生活で体内に取り込んでいるダイオキシン量を大幅に下回っています。同庁漁場資源課は「以前から指摘されていたことが裏付けられた結果。バランスよく食事を取れば健康面の心配はない」と説明しています。
●ダイオキシン類濃度が高かった魚介類
米国沖大西洋 | 輸入クロマグロ | 10.1 |
大阪湾 | 天然コノシロ | 9.1 |
瀬戸内海東部 | 天然アナゴ | 8.3 |
関東沖 | 天然カジキ | 6.7 |
東京湾 | 天然スズキ | 6.5 |
米国沖大西洋 | 輸入クロマグロ | 6.5 |
瀬戸内海東部 | 天然タチウオ | 6.0 |
中部太平洋 | 天然キハダマグロ | 5.1 |
山陰沖 | 天然ベニズワイガニ | 4.5 |
瀬戸内海西部 | 天然タチウオ | 4.4 |
東京湾 | 天然スズキ | 4.3 |
瀬戸内海南部 | 養殖ブリ | 4.0 |
数値は1グラムあたりの含有量。単位はピコグラム。クロマグロとスズキの二つの数値は調査年が違う。
■TDI
ダイオキシン類を含んだ食品を一生涯、毎日食べ続けても健康に影響しないとされる1日の耐容摂取量。体重1キログラムあたり4ピコグラムまで。厚生労働省の調査では、日本人が食品や空気から取り込んでいるダイオキシン量は、1日平均体重1キログラムあたり1.5ピコグラム。
ダイオキシンを低減するための食事の工夫については・・・>> 次ページへ