会社の人が諦めていること
「“内”よりも“外”に生きよう。そうすることで新しい、未知の、私にふさわしくない力が得られるかもしれない。」(開高健『開高健全集22』「頁の背後」より)開高健と言えば、釣好き、酒好き、食事好きで有名な芥川賞作家。彼の作品のほとばしる魅力は、彼自身が外界に対し絶えず興味を向け、内なるものを新陳代謝させていたからだろう。ベトナム戦争然り、凍えるベーリング海や緑の魔境アマゾン、モンゴル高原の奥地にある湖での釣りなど。
会社も、開高健とまで行かなくても、外界の刺激に触れなければ、おかしくなる。
「事件は会議 室でおこってるんじゃない。現場でおこってるんだ!」
言うまでもなく「踊る大捜査線 THE MOVIE」の名台詞。机上や会議室で企画を考えても魅力溢れる企画なんてできない。いつもと同じ仲間と同じ仕事をしていても、その仕事自体が持つ矛盾や非効率さ、曖昧さに無頓着になり、いい仕事ができなくなる。ともすれば、ユーザーと企業との間にギャップが生まれ、大きな問題として発露する。
会社の外の意見は、アンケートでも取らない限り、伝わらない。お客様は「この商品ダメだな」「このサービスはダメだな」「これは危険だ」と思っていても、それを会社に伝えることは無い。ただ使わないという行為だけだ。結果、売上が下がってから会社はやっと気づく。もしかしたらそれでもずっと気づかないかもしれない。なぜなら売上が下がった原因が、会社の人が考えるのをやめてしまったこと、つまり「会社の人が諦めていること」かもしれないから。
学生のみなさんが、プロである社会人にアイデアを披露する鍵は、この視点だ。つまり、社会人が「めんどくさいなあ」「仕方ないなあ」思っている「会社の人が諦めていること」を掘り下げることは、学生である今のあなただからできるのだから。この視点なら、もし人事に
「いや、それは法律で」
「それは多分失敗する」
「過去前例が無い」
「素人の発想だよ」
とけなされても、「もちろん不勉強でかつ実務経験の無いことはご指摘の通りですが」と断りながら、
「私は御社を志望する学生だからこそ、
先輩とは違った視点で物事を考えることが今できる。
この視点や姿勢を忘れずに、御社で働きたい」
と話せば、「君の可能性を伝える」目的は達成される。
「“内”よりも“外”に生きよう。」
この発想は、今のみなさんの強みでもあり、社会人になっても忘れてはいけない視点なのだ。
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