(「会社の規模」+「収益性」)÷2=?
税務上、経費に出来る金額の限度のことを「損金算入限度額」といいます。寄付金の損金算入限度額は、寄付金を支出する会社の「大きさ」と「収益性」の平均額を考慮して決められています。
一般企業の場合、具体的には以下のような計算式で損金算入限度額を求めることとされています。
「損金算入限度額」
={(期末資本等の額×事業年度の月数÷12×2.5/1,000)
+(その年の課税対象利益×2.5/100)}×1/2
最初のカッコ内は、資本等の額に一定割合を乗じています。これで会社の「大きさ」を反映させ、次のカッコ内で課税利益に一定割合を乗じることにより、会社の「収益性」を反映させているのです。
最後の1/2は、「大きさ」と「収益性」の平均を出す、ということです。
会社の規模が大きければ大きいほど、また、課税対象の利益が多ければ多いほど、寄付金の損金算入限度額も大きくなってくるというわけです。
「課税対象の利益」と「会計上の利益」は異なりますが、資本等の額と利益の額さえ分かれば、案外簡単に(ある程度ザックリではありますが)寄付金の損金算入限度額を見積もることが出来ます。
会計上の利益で損金算入限度額を見積もった場合には、「課税対象の利益」と「会計上の利益」の差額の2.5%が誤差となって現れてきます。
もちろん申告をする際には計算を正確にしなければなりませんが、よほどの差額でない限り、予算管理等の見積もりで使う上ではあまり気にしないで良いのではないでしょうか。
どうしても、という場合には税理士に相談してください。
最後に「例題」をこなしてみましょう!
言葉で見ると難しいと思ったものも、実際計算してみると、案外そうでないことが多いもの。 是非、例題にチャレンジしてみてくださいね。 |
損金算入限度額が出たところで、最後に軽く例題をこなして今回の「寄付金」については一区切りとしましょう。
■例題1
(問題)
A社の損金算入限度額は10万円ですが、指定寄付金を5万円、特定公益増進法人に対する寄付金を3万円、一般寄付金を12万円支出しました。
A社の税務上経費とできる寄付金額は最大でいくらでしょうか?
(答え)
18万円です。
指定寄付金は限度がありませんので、10万円全額。
特定公益増進法人に対する寄付金は、限度額の10万円以内で収まっていますので、3万円全額。
一般寄付金は損金算入限度額までの10万円。
以上より、会計上は20万円の寄付金ですが、税務上は最大18万円までが経費となります。
■例題2
(問題)
B社の損金算入限度額は10万円ですが、指定寄付金を5万円、特定公益増進法人に対する寄付金を15万円、一般寄付金を3万円支出しました。
B社の税務上経費と出来る寄付金額は最大でいくらでしょうか?
(答え)
23万円です。
指定寄付金は限度がありませんので、5万円全額。
特定公益増進法人に対する寄付金は、損金算入限度額までの10万円。ただし、限度額を超える5万円については、一般寄付金として取り扱います。
一般寄付金の額は3万円の他、特定公益増進法人に対する寄付金の限度を超えた部分の額5万円をプラスして8万円となります。8万円は限度額の10万円以内ですので、8万円全額。
以上より、会計上23万円支出した寄付金全額が、税務上も経費と認められることになります。
お分かりになりましたか?限度額は特定公益増進法人に対する寄付金、一般寄付金の区分ごとに当てはめて判定することと、特定公益増進法人に対する寄付は、限度額を超えたとしても、その部分をもう一度一般寄付金として当てはめるチャンスがあること、この2点が例題のポイントです。
この程度が分かれば、正直、もう充分です。
今回は会社(法人)での取り扱いについてご紹介してきましたが、もちろん個人でも「寄付金控除」や、寄付の内容によっては「税額控除」といった特典が設けられています。
これらはいずれも確定申告をしないと受けることが出来ない決まりです。詳細は、確定申告の季節にご紹介していきます。
【関連リンク】 『寄付金はなぜ税務上経費にならないの?』シリーズ
・「寄付金はなぜ税務上経費にならないの?(1)」
寄付金はなぜ税務上経費にならないのか、その理由をご紹介します。
・「寄付金はなぜ税務上経費にならないの?(2)」
実際に寄付金を支出し、経理処理する際のポイントをご紹介します。