ROAを上げるにはどうすればよいのか
高い水準で推移している会社もあれば、年々なぜか減少傾向にある会社、あるいはそうでなくても同業他社より低い水準にとどまっている会社、様々あるかと思います。
現状が分かったのならば、その分析をし、場合によっては対策を打っていかなければなりません。
ROAが低い水準の会社は分析することにより、自社の弱い点を探し出して何らかの手を打つことが出来るのはもちろんのこと、高い水準にある会社も「自社の強み」を知ることにより、その強みを維持し、さらにより強固にすべく対策を打つことが出来るでしょう。
「ROA」を上げるには?まずは算式を再確認
さて、現状を分析するにあたって「ROA」とは一体どのような要素から構成されている指標だったのか、再確認してみましょう。「ROA」の公式は、
最後の「×100」の部分は「ROA」を百分率(%)で表示するためのものですので、あまり気にする必要はないでしょう。
と、すれば2つの要素、つまり「経常利益」と「総資産」が重要だということが分かるはず。
「ROA」を上げるためには「経常利益」を増やす、あるいは「総資産」を減らすことが必要であることが、この算式から読み取ることが出来るでしょう。
ROAを上げるためのポイント1:経常利益を増やす
「経常利益をふやす」といきなり言っても、漠然としてどうしてよいものかあまり想像がつかないのではないでしょうか?そんなときはお手もとの「損益計算書」を活用してみましょう!
■ 「経常利益」のもとめかた
損益計算書を見ると、以下のような過程を経て「経常利益」が求められるのかお分かりになるでしょう。
- 本業での収入である「売上高」から、本業でかかるメインの経費「売上原価」を差し引く
- 1.から会社の通常の営業でかかる家賃や人件費等の「販管費」をさらに差し引き
- 2.にその他本業以外で発生した収益である「営業外収益」を加え、同様に本業以外で生じた費用である「営業外費用」を差し引いたもの
以上より、「経常利益」をふやすには「売上高」「営業外収益」の2つの収入を増やすか、「売上原価」「販管費」「営業外費用」の3つを減らすことが必要となってくることが明らかになりました。
■ 「売上高」「営業外収益」を増やす
確かに売上アップすれば、ROAも良くなりますが…… 相手の立場を考慮しながら発言をしないと、たとえ間違っていないことでも相手を傷つけたりしてしまう場合があります。
それは、そんなことを言われるとっくの前から会社は常に「売上」を上げるために頑張っているからです。売上を簡単に増やす方法があれば、会社もそんなに苦労はしないのです。
では「営業外収益を増やそう」というのはどうでしょうか?具体的に営業外収益の内容を挙げると「受取利息」「受取配当金」等のいわゆる「金融収益」や、本業とは違うけれども収入のある「雑収入」など。
潤沢な資金があれば、より収益を生み出せるような投資方法等を検討しても良いところですが、リスク等も併せて考えると現実的には一定規模以上の会社に限られてしまうところでしょう。また、副収入を増やす方策を考えても良いかもしれませんが、これも検討の時間やコストをかける必要があります。
以上から、「売上高」「営業外収益」を増やすというのは、ちょっと現実的ではないかもしれません。
■ 「売上原価」「販管費」「営業外費用」を減らす
収益を増やすのが難しいのならば、出て行くほうを抑えるしかありません。
「売上原価」ならば、仕入金額を少しでも抑えられないか検討してみるのが良いでしょう。「販管費」の場合も、基本的には同様です。安い文具屋を探してみたり、今は使っていない電話回線があれば解約しても良いでしょう。その他、交際費の見直し等、一つひとつの金額は小さくても、無駄遣いがあればこれを機会に見直しをかけていくようにすれば、一年経つと結構な数字になったりするものです。
「営業外費用」のメインとなるものと言えば「支払利息」でしょう。これを抑えるためには「借入金の繰上げ返済」をするのが手っ取り早いでしょう。借入が無くなれば、利息の支払もなくなってしまいますからね。
ただし、借入をしている会社は必要だから借入をしているはず。いきなりまとめて返済するのは難しいかもしれません。
そんなときは、預金の借り換えを検討しても良いかもしれません。現在の利率より有利な借入があれば、そちらに乗り換えるようにすれば利払いを抑えることが出来ます。
以上より、入ってくるものをいきなり増やすのは難しいですが、出て行くものを抑えるのは案外手をつけるところが多いと言えそうです。
ROAを上げるためのポイント2:総資産を減らす
不要なものをスッキリさせること。 人間だけでなく会社の経営にも良い効果をもたらすのです。
ここでのポイントは「不要なものは持っていないかを洗い出し、もし不要なものが見つかったのならば、処分を検討しよう!」ということです。
たとえば、何年間も音沙汰のない得意先に対する売掛金などは、これからも回収する方針なのか、あきらめるのかを検討したほうが良いでしょう。あきらめてしまう場合は、債権放棄の手続きをすることにより税務上も売掛金を消去することが出来ますし、たとえあきらめない場合でも貸倒引当金を多く積むことが出来るかもしれません。
また、長年使っていない固定資産はありませんか?昔は良く使っていたけれど、現在は古くなって使わなくなった保養所の建物などは売却を検討しても良いでしょう。持っていても使わなければ、固定資産税や水道光熱費等の維持費がかかるだけで、会社のためになりません。
その他、帳簿には載っているけれども、現在はどこにあるのかも分からない古い固定資産等は、「除却」をすれば無駄な資産も減らせますし、固定資産税等も減額することが出来るでしょう。
手持ちの資産をいかに効率的に利用しているか
私たちは、色々なものを「持って」いないと落ち着かないと言うか、安心できなくなってしまいがちで、つい余計な資産を抱えてしまう場合も多いかと思います。しかしながら、それは会計の世界から見ると「ただの無駄遣い」と映る場合も多いのです。
最低限の元手(総資本)で、最大の利益(経常利益)を出せる「やりくり上手」な会社であること、現在はそれが求められる傾向にあり、それを表す指標がズバリ「ROA」なのです。
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