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終の棲家を奪ったJR脱線事故の今を追う

4月に起こったJR福知山線脱線事故で、列車が突っ込んだマンションは今、どうなっているのでしょう?現在も補償交渉は完全に解決していません。そこで、マンション住民の6カ月間を追ってみました。

平賀 功一

執筆者:平賀 功一

賢いマンション暮らしガイド


終の棲家が“終の棲家”でなくなった日
4月26日(=事故発生の翌日)午前11時ごろ、荷物を取りにあわててマンションに戻ってきた女性は「昼から避難するよう言われている。(マンションに突っ込んだ)電車を引き抜くので危険が生じる可能性がある、とJR西日本側から説明を受けた」と話した。荷物を抱えたマンション住民が、JRの職員に先導されて次々とマンションから出てきた。

3階に住む会社員は午前11時45分ごろ、妻と2人で2日分の着替えを持ってホテルに向かった。「前日のホテルへの避難の連絡は、ポストに紙を一枚入れただけだった。僕らも被害者なのに、いまだに謝罪はない」とJRの対応に不満をあらわにする。

2階に住む伊東さんは、妻、娘と近くのホテルで一夜を過ごした。1つ下の階が、電車がめり込んだ駐車場。自室は外壁が壊れ、断熱材がむき出しになった。「目の前で亡くなっている人をいっぱい見た。事故当時、家にいた妻はとても怖がっている。もうこの家には住めない。JRに買い取ってもらうなどして一日も早く家を出たい」と言った。


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本年4月25日に兵庫県で起こったJR福知山線脱線事故で、1階駐車場部分に列車が突っ込んだ47世帯(9階建て)のマンション「エフュージョン尼崎」に住む住人の声です(朝日新聞4月26日より引用)。やっと手に入れた夢のマイホームで家族幸せな日々を送っていた矢先に、誰もが予想しえなかった大惨事に見舞われてしまい、危険がある自宅マンションから避難先のホテルへ移動する様子が鮮明に描写されています。

4月25日は終の棲家が“終の棲家”でなくなった、まさにその日で、同時に、苦悩が始まる日となってしまいました。

制限速度40キロオーバーによる人災(?)


まずは簡単に、事故の概況(鉄道事故調査委員会による中間報告)を振り返っておきましょう。今回の事故は、兵庫県尼崎市のJR福知山線「塚口」~「尼崎」駅間のカーブで、宝塚発同志社前行き上り快速電車(7両編成)の1~5両目が脱線。1両目は横転し、前部が線路脇のエフュージョン尼崎1階の機械式駐車場奥の壁に衝突、後部下面はマンション北西側の柱にぶつかりました。2両目は中央部左側面が1両目後部を間に挟んでマンション北西側の柱に、また、後部左側面が北東側の柱にそれぞれ衝突するなどしました。さらに3~5両目も脱線し、6・7両目は脱線しませんでした。

国土交通省航空・鉄道事故調査委員会の調査によると、電車は時速百十数キロでブレーキをかけずにカーブに進入していたことが判明しており、主原因は“速度超過”と断定されています。事故車両は制限速度を約40キロ上回る速度でカーブに進入していたことになり、乗客106名と運転士1名の計107名が死亡、約550名が重軽傷を負う悪夢へとつながってしまいました。


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