なぜ企業はコンサルティングファームを使うのか?
どうして、企業は、高いコンサルティング料を払ってまでコンサルティングを利用するのでしょうか?コンサルティングの仕事について良く聞かれる質問のひとつだと思います。
いろいろ理由はあると思いますが、つぎの3つがポイントになると考えています。
自社にないノウハウを手に入れる
まず、最初に考えられるのは、自社にないノウハウを手に入れるということ。自分たちで考えていても解決ができない課題を、コンサルティングファームに依頼するということです。とくに、IT領域では、事業戦略しかり、業務システムしかり、めまぐるしく状況がかわっており、社内の人材では知識やノウハウが追いつかないという場合が多いです。そのような場合、社外の知見をもとめてコンサルティングファームに依頼をすることになります。
「自社にないノウハウを求めて」が成り立つのは、依頼する側に知識・ノウハウが少なくて、コンサルティング側にそれが豊富にあるという、つまり「知識の差」があるという前提があります。しかし、「知識の差」がとくにないにも関わらず、コンサルティングを依頼するケースが増えています。
自社で出来るにもかかわらず、あえてコンサルティングを依頼するというケースがある。これは意外に思われるかもしれません。
これは、「経営のスピード」と密接な関係があります。
現代の経営はスピードが命
自社で出来るにもかかわらず、あえてコンサルティングを依頼する。経営の課題や問題点を十分理解しており、その解決策の方向性も見えいて、自社でやってもできないことはないのにコンサルティングを依頼することがあるのです。これはどうしてなのでしょうか?
なぜかというと、誤解を恐れずにいえば、「金で時間を買う」ということです。
近年では、1分1秒でも早く経営施策を実行することが、競合に勝つ重要な要素になってきています。社内で何年もかけてやって、時間がかかって出来たとしても、それが外のスピードからみて遅くては仕方がありません。
自社で出来ることも、専門のコンサルティングファームに依頼して、より早く、より確実に実行することで、競合よりも、いち早く改革を成し遂げて、優位性を得ようという考えです。
また、内部だけで行うと、改革に反対する勢力がでてきた場合、これを説得するのに時間がかかるということもあります。コンサルティングという外部の客観的な意見をあいだにいれることで、社内がスムーズにまとまるという効果も期待できます。
自社の強みに経営資源を集中させる
「コアコンピタンス経営」という言葉があります。コアコンピタンスというのは、自社の持つ経営上の強みのことをいいます。たとえば、製薬会社の場合、薬の開発能力が「コアコンピタンス」にあたります。その強みに経営資源を集中して投資し、徹底的に他社との差別化を図るというのがコアコンピタンス経営の考え方です。そのため、自社の強みが発揮できない業務は、外部に委託してしまったほうがかえって効率がいいということになります。
たとえば、ルーターやネットワーク機器の最大手であるシスコ社は、製品の開発に経営資源を集中させて、製造や流通・販売といったところを外部に委託しまっています。製造はアジアの提携メーカーがおこなって、販売は世界中に代理店を持っています。
この考え方の延長で、「企画」の機能をコンサルティングファームに委託してしまうというということがあります。
経営者は大まかな方向性だけを示し、細部のリサーチや計画の作成は、コンサルティングファームを使った方が効率的、ということです。リサーチや数字の操作になれているコンサルティングファームの方が、より早く、より確実に計画を作ってくれるという考えからです。とりわけ米国においては、このような割り切ったコンサルティングの使い方をする場合があります。