全体を見ると、減価償却制度の見直しなど「企業減税」が優先されたような印象ですが、不動産に関連した改正もいくつか含まれており、その中で、マイホームを取得して住宅ローンを組んだ方にとっては、「住宅ローン減税」の改正内容が気になるところでしょう。そこで今回は、“選択適用”となった住宅ローン減税の改正内容、ならびに、どちらを選ぶのが有利なのか、いくつかのケースを紹介したいと思います。
どちらか有利な方を選べるようになる
まずは、07年度の改正内容から見ていきましょう。日本経済は、ようやくバブル崩壊経済に終止符を打てる程度まで企業が業績を回復し、「踊り場」から脱却できるまでに体力を取り戻しました。ところが一方では、少子・高齢化が進み、また、所得や地域などによる格差が広がりをみせるなど課題も山積しており、「成長重視」をかかげる安倍政権にとっては中小企業や地域産業の発展あるいは活性化が至上命題となっていました。
その結果、企業を優先した改正内容となってしまい、我々、国民(家計)に対する個人向け税制改正は小規模にとどまりました。「景気回復に対する実感が乏しい」との声も多く聞かれますが、企業業績の改善を最優先に、次いで、国民生活への配慮といった政策を取った結果なのです。あとは、こうしたシナリオ(政策)が“机上の空論”で終わらないことを願うばかりです。
さて、本題に話を進めますと、新税制の特徴は2004年度税制改正で決まった従来の住宅ローン減税制度(【図表1】)と併存して、新たな住宅ローン減税制度(【図表2】)を創設した点にあります。国から地方への税源移譲に伴い、所得税と個人住民税の負担割合が変更になることに配慮し、入居年によってローン減税(還付額)に不公平が生じないよう、新旧どちらかを選べるようになりました。
【図表1】従来の住宅ローン減税制度 (04年度税制改正)
居住年 | 控除期間 | 借入金の年末残高 | 最大控除額 | 適用年・控除率 | 2007年 | 10年間 | 2500万円以下の部分 | 200万円 | 1~6年目:1.0%7~10年目:0.5%2008年 | 10年間 | 2000万円以下の部分 | 160万円 | 1~6年目:1.0%7~10年目:0.5%
居住年 | 控除期間 | 借入金の年末残高 | 最大控除額 | 適用年・控除率 | 2007年 | 15年間 | 2500万円以下の部分 | 200万円 | 1~10年目:0.6%11~15年目:0.4%2008年 | 15年間 | 2000万円以下の部分 | 160万円 | 1~10年目:0.6%11~15年目:0.4%