このところ、株価を始めとして、ほとんどの景気指標が上昇傾向を示しています。労働者の賃金も、厚生労働省の「毎月勤労統計調査」を見る限りでは、今年の4月以降ずっと、対前年同月比でプラスとなっています。ようやく、会社が業績のアップ分を社員にも還元し始めたというところでしょうか。そうはいっても、賃金のアップ率は0.1~0.6%程度の微々たるものなのですが。
その一方、雇用状況も昨年夏以降、常用雇用者数(正社員、パートタイマーなど)は対前年同月比でプラスとなっており、雇用環境はかなり改善されてきたとみられます。
企業の雇用が増えるということは、その分、求人も増えるということですが、転職者はむしろ減少傾向にあると聞きます。たとえば、資格の学校などに通うビジネスマンが減ってきた(キャリア系月刊誌編集長談)とか、派遣スタッフとして新規登録を希望する人が減っている(派遣会社スタッフ談)といった話から類推すると、いまの職場にある程度満足できるようになってきたこともあって、転職を志す人が減っていると見ていいかもしれません。
とくに派遣に関していえば、派遣社員を活用しようとする企業が急速に増加し、派遣要請が伸びている反面、派遣スタッフとしての新規登録者が少なくなっているということで、広告など採用コストの増大が問題となっており、大手派遣会社はそれぞれ、11月から派遣先企業に対して、派遣料金の値上げの交渉を開始しています。
その結果については、まだ報道されていませんが、もし、派遣料金がアップするとなると、そのうちの幾分かは、派遣スタッフの賃金にも反映することが期待されます。なにしろ、派遣料金はここ7年ほどずっと下がりっぱなしで、時給もなかなか上げてもらえない状況でしたから、スタッフにとっては朗報といえるでしょう。
ただし、前記の常用雇用者の賃金同様それほど大幅アップが見込めるわけではありませんので、今後とも自分自身のスキルアップを図ることで、より条件のいい仕事をゲットしていく努力が求められるところです。
次ページに、参考として、平成9年度と平成15年度の主な派遣業務別派遣料金(派遣労働者1人1日当たりの平均額)を出しておきます。この表を見ればわかるように、派遣料金は唯一「調査」を除いて軒並みダウンしています。
中でも、「通訳、翻訳、速記」、「放送番組等演出」、「広告デザイン」、「放送番組等の大道具・小道具」では、3000円を超えるダウン。
派遣で働いている人に対する調査(厚生労働省「派遣労働者実態調査結果の概況」2005年9月)に盛り込まれているスタッフの時間給と比較すると、派遣料金の約65%が派遣スタッフの取り分として計算されますので、通訳などでは1日の1日の収入は2000円近くも下がってしまうことになります。
実際には、派遣先次第で多少のアップダウンはありますが、平均すると、仕事を続けてスキルが上がっているにもかかわらず、時給が下がるという状況になっているわけですから、いくら需給の関係だとか社会情勢がウンヌンといわれても、おいそれとは納得できない下がり方ではありますよね。