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ルールの法制化が話題に 解雇を巡る法律知識(前編)(6ページ目)

東京都の労政事務に関する報告によると、97年以降、労使間トラブルの相談内容のトップは「解雇」となっています。転職に関連する法律シリーズ。今回はこの「解雇」を取り上げます。

執筆者:西村 吉郎

Q:アルバイト先に転職を決めたら懲戒解雇に

勤務先の業務終了後にアルバイトしていた出版社から誘われて、正社員として転職することにしました。ところが、会社は、就業規則でいう「在籍のまま他に雇い入れられたとき」に該当するとして懲戒解雇を通告してきました。1年間アルバイトしていたのは事実ですが、納得いきません。

A:二重就職に当たらなければ懲戒解雇は不当
一日の業務終了後や休日として指定された土曜・日曜など、労働契約で定められた労働時間以外の時間は労働者の自由時間であり、基本的にどのように利用しようと、企業側が関与できる問題ではありません。しかし、多くの会社では、就業規則で「会社の許可なく在籍のままほかに雇用される」ことを禁止し、これに反した場合を懲戒事由として定めています。

この、就業規則における二重就職の禁止条項は、裁判例などから見て有効ですが、禁止される二重就職の範囲は限定されると解釈されています。すなわち、会社の就業時間に抵触しない時間帯を利用してのアルバイト、内職などは二重就職の範囲には含まれないとする解釈です。

これに対して、アルバイトのために疲れてしまって仕事に身が入らない状況にあったり、同業他社でのアルバイトを行っている場合などは、本来の業務に支障を来しているとか、企業機密の漏洩その他企業秩序を乱すおそれがあるなどの理由によって、禁止対象となる二重就職の範囲に含まれると考えられます。

あなたがこれまで、会社の仕事にまったく支障のない範囲でアルバイトしてきたというのであれば、会社の処分は行き過ぎということになります。

Q:社長との口論が原因で懲戒解雇されそう

先日、社長とささいなことで口論し、かねて業務上の不満が募っていたこともあった、その場で退職を口頭で通告、翌日には退職願を提出しました。ところが、社長は相当に気を悪くしたらしく、私を懲戒解雇にしようとしています。こういうときはどのように対処すればいいのでしょうか。

A:結論を急ぐより冷静な話し合いによる解決を
懲戒解雇と普通解雇は、両方とも使用者側が労働契約の解除を通告するという点では同じことですが、懲戒解雇は制裁という面も持ち、労働者により大きな打撃を与えます。したがって懲戒解雇は、それを行使するに際して、合理的事由とは認めらる範囲はさらに狭くなっています。

具体的には、
1:窃盗や障害などの刑事犯にあたる行為をした
2:賭事やわいせつ行為などにより職場の規律を乱した
3:無断欠勤、目に余る遅刻・早退など重大な服務違反があったなど労働者の故意または重大な過失によって、会社がその財産や経営活動に重大な損害を受けたと認めるに足りる客観的事由があることが必要なのです。

あなたのケースでは、社長と口論したことが懲戒解雇の事由となりうるかどうかがポイントとなります。その原因や内容を検討してみないと判断するのは難しいのですが、たとえば社外の人がいる前で会社を批判するなど会社の名誉を汚したり、あるいは信用失墜させるようなことでもない限り、相当性を欠くものと考えられます。

いずれにしても、いさかいの当事者は感情的で、事態の評価も過大になりがちです。それを避けるためにも、ここはもう一度、冷静な話し合いの場を設け、事態の悪化を防ぐべきでしょう。万が一、解雇にあった場合には、早急に労働基準監督署などに相談し、客観的な解決をお願いしましょう。
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