転職では円満退職が鉄則だとわれます。採用の絶対条件とする会社もあるくらいです。でも、どうして円満退職しなければならないのでしょうか。円満退職できなかったためにトラブルを招いてしまったケースを参考に、そのワケを考えていきましょう。
CASE1
クライアントに迷惑かけた分の損害を賠償請求されそう
コンピュータのプログラマーとして勤務していたAさんの会社では、就業規則で、「従業員が退職するときは、30日前に所属上長を経由して退職届を提出し、継続して勤務しなければならない」という決まりがあった。Aさんがこの決まりに従って、1カ月の退職を上司に願い出たところ、上司は、納品まであと2カ月なのだから、それまで退職を延ばすよう要請した。しかし、Aさんは「すでに新しい勤め先も決まっているから」と1カ月後の退職を強行。Aさんが抜けたあとプロジェクトの進行は一時的に停滞し、結局、約束の納品日より半月遅れとなった。その分、請負金額の値引きを要求されてしまったのである。会社は、この損害が生じたのはAさんの無理な退職にあるとして、Aさんに対して損害賠償請求を検討している。 |
たとえ就業規則の退職に関する規定や民法の規定(退職を意思表示してから14日を経過した時点で退職の効力が生じる)を守ったとしても、仕掛かりの仕事を途中で放り出して退職しては円満退職とはいえません。とくに、Aさんのようにプロジェクトの一員として仕事をしている場合には、できればそのプロジェクトが完了するまでは退職すべきではありません。ソフト開発などの請負業務では、納品後に不具合が生じることも考えられますので、納品してから退職まで少なくとも半月程度は余裕を持ちたいところです。
社員の退職などを理由に会社が損害賠償を行う場合、会社にはその損害が確かに当該社員の行為が起因していることを証明する必要があります。その困難さと、裁判に訴えた場合の手間と費用の面から、現実にはAさんが損害賠償請求されることはないと考えられますが、いずれにしても、Aさんが前の会社から相当に嫌われる存在になったことは間違いありません。
もし、新しい仕事に関連して前の会社の上司や同僚に尋ねたいことがあったとしても、まず協力は得られないでしょう。
CASE2
資料の持ち出しを理由に窃盗罪で訴えられた
Bさんは、退職間際になるまで残務整理ができなかったため、自宅に資料を持ち帰ってまで残業し、何とか退職日までに終わらせた。ところが、会社の資料をうっかり自宅に置きっぱなしにしたため、そのことを理由に窃盗罪で訴えられてしまった。 |