技術職や営業職の転職では、技術や知識の漏洩、顧客リストの流出などに伴う販路の妨害やプライバシー漏洩などが問題になることがあります。とくに、同業他社に転職した場合の機密漏洩を防止するために、退職時に、退職後の一定期間、同業他社に転職しないことなどを約束する契約(競業避止=きょうぎょうひし契約といいます)に署名捺印させる会社も少なくありません。

著作権法では、頭に入っている知識にまではその効力は及ばないとされています。ですから、転職先で、前の会社での経験を生かして、前の会社の製品やシステムと似通ったものを作ったとしても、アイデアを生かしたものであるかぎりは問題にされません。

しかし、Bさんのように、たとえ意図的にではなくても会社の資料を持ち出したりすると、その資料を窃盗した罪で訴えられることもあります。会社によっては、たとえ個人的に購入したノートや手帳であっても、その内容を退職時にチェックして、機密に相当する部分があればそのページを廃棄もしくは会社に返却するよう求めるところもあると聞きます。

退職が決まったら、自宅に持ち帰った資料類は退職日までに返却するとともに、いわゆる「ふろしき残業」は避けるべきでしょう。


CASE3
残務整理が不十分だったため、転職先にまで問い合わせの電話が
退職間際まで忙しかったために、残務整理もそこそこに退職したCさんのもとに、前の会社の後輩から、ことあるごとに問い合わせの電話が入る。
はじめのうち電話はCさん個人のケータイにかかっていたが、仕事中だからとケータイの電源をオフにしたら、どこで調べたのか転職先の受付を通じて電話がかかるようになった。度重なる問い合わせ電話に、転職先の上司もしまいにはキレてしまった。



現在の業務で、進行状況など自分にしかわからないことは結構あるものです。そんな部分こそ、しっかりと後任者に引き継いで退職することが大事になりますが、ここをいい加減にしたまま退職すると、Cさんのようにひんぱんに前の職場から問い合わせが入って、対応を求められることにもなりかねません。

自業自得とはいえ、転職先で仕事をしている最中にまで、前の会社の仕事に振り回されることになると、落ち着いて仕事することはできなくなります。度重なると、転職先で「いい加減にしろ」と叱責を受けることになるでしょう。

万全を期したつもりでも、どこかにもれがあって前の会社から問い合わせが入ることはありえます。このようなときに備えて、後任者には自宅やケータイの電話番号を教えておくべきですが、業務時間中にかけられたのでは困ってしまいますので、もし連絡したいことがあれば、業務時間外を見計らうよう、要請することもお忘れなく。