(記事掲載日/2007.07.14)

選挙のたびに注目される「比例代表制」。19世紀には考案されていたという比例代表方式ですが、どのように議席配分をするのか、人々は試行錯誤してきました。どのような議席配分方式があるのか、みていきましょう。

1ページ目 【比例代表制の歴史とヘアー方式の考案】
2ページ目 【「アラバマのパラドックス」とドループ方式】
3ページ目 【日本で実施のドント方式と修正サンラグ方式】

比例代表制の歴史

1人しか当選しない小選挙区制は、落選者に投じられた票=死票をたくさん生んでしまい、正確に民意を反映しないのではないか、ということはよくいわれていることです。19世紀の頃から、それはいわれていました。

しかし、たくさんの人が当選する大選挙区制は選挙規模が大きく実行が難しい。そこで生み出されたのが、基本的に政党を単位として議席を民意に沿ってほぼ忠実に振り分ける、議院内閣制だったわけです。

比例代表選挙の構想が具体化するのは19世紀後半です。デンマークからその構想は広まり、イギリスでヘアー、そしてその友人ドループといった学者たちがそれぞれ選挙法を提唱。

これに当時有名だった学者J.S.ミルが賛同、第3回選挙法改正のときにおいては比例代表制度の導入が大きく主張されたのでした。

1899年、ベルギーの学者ドントが提唱した比例代表制は、翌年ベルギーの下院選挙に採用されました。こののち、ヨーロッパ諸国を中心に比例代表制が広まっていき、現在多くの国が採用しています。

ちなみに、日本の近代数学の草分け的な大数学者、藤沢利喜太郎も1932年、『選挙法の改正と比例代表』という本を出版、比例代表制度を提唱しています。日本で比例代表を、という主張がされていたのは実に昭和の初期からなんですね。

1議席獲得可能な平均得票をもとにした「ヘアー式」

単純に政党の得票率だけ議席を配分しようと思っても、得票率はだいたい小数点第何位にもわたってしまうだけで、まさか1議席を分割することもできないわけですから、うまくはいきません。

そこで学者たちは、さまざまな方法で、すっきり議席が決まり、かつ民意を反映する方法を研究しはじめました。

最初に具体的な比例代表制を構想したヘアーの方式、いわゆるヘアー式は、現在オーストリアやベルギー、ルーマニアやブラジルなどで採用されています。

ヘアー式では、投票総数を議員定数で割った数の整数部分を「ヘアー基数」とします。議席獲得のための平均獲得票数ということになりますね。小数部分を切り上げるか切り捨てるか、これも大きな問題なのですが、ここでは取り上げません。

各政党の獲得票数をヘアー基数で割ると、各政党がヘアー基数の何倍獲得したかがわかりますね。これが、ヘアー式での獲得票数なわけです。

試しに、定数7議席の2003年衆院選・北海道ブロック比例代表選挙での獲得票数をもとに、ヘアー式で議席配分をしてみます。ヘアー基数の小数部分はここでは四捨五入しています。

ヘア-基数で最初に獲得票数を割った結果
ヘア-基数で最初に獲得票数を割った結果。2議席が確定しないままになってしまう。



5議席は決定するのですが、当然のように余りが出てしまい、残り2議席が決定しません。

このような場合、ヘアー式では計算で余った数を持っている政党の多い順に、議席を配分します。余った数が多かったということは、それだけ1議席獲得票数に近いものを持っているわけで、民意が集まっているからだと言えるからです。

ヘア-基数と最大剰余法
獲得票数÷ヘア-基数で生まれた余り(剰数)の多い政党から優先的に残り議席を配分。



こうして、民主3議席、自民3議席、公明1議席、と7議席が確定します。このやり方を「最大剰余法」といいます。

しかし、このヘアー式には思わぬパラドックスが潜んでいました。次のページからみていきましょう。