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世界の憲法改正手続比較(3ページ目)

憲法改正論議がわが国でもさかんになってきましたが、日本以外の国の憲法改正手続はどうなっているのでしょう?なかなか情報のない他国の憲法改正手続について、先進国を中心に情報を集めてみました。

執筆者:辻 雅之

1ページ目 【日本、そしてイギリスの憲法改正手続とは?】
2ページ目 【アメリカなど連邦制をとる国の憲法改正手続】
3ページ目 【先進国でも国民投票をしないで改正する国がある】

【先進国でも国民投票をしないで改正する国がある】

日本国憲法と同じような改正手続の憲法

韓国憲法は、日本と改正手続が似ています。

国会(一院制)の3分の2以上の多数による議決によって決められた憲法改正案は、国民投票によって過半数の賛成を得れば承認されます。ほとんど日本と同様です。違いは、憲法で明確に大統領の改正提案権(発議権)が規定されていることでしょう。

デンマークでは、国会(一院制)が改正案を議決した場合、まず国会の総選挙が行われ、総選挙後の国会で改正案を無修正で再議決すると、国民投票で是非を問われることになります。国民投票での承認条件は、投票数の過半数の賛成かつ全有権者の40%以上の賛成となっています。

スペインでも国民投票は必須です。改正案の議決には基本的に国会両院のそれぞれ5分の3以上の賛成が必要となっていますが、上院が絶対多数で議決すれば、下院は3分の2以上の賛成で議決することができることになっています。

ただし、憲法の全面改正、人権規定、その他特定の重要規定については、両院の3分の2以上の多数の議決により改正を承認した後、国家を解散し、その後の新国会で改正案を審議し、また両院の3分の2以上の多数で議決しなければなりません。

そして、いずれにしても国民投票で過半数の賛成を得る必要があります。

国民投票の実施をしないこともある憲法

フランス
フランス大統領(似顔絵はサルコジ氏)には憲法改正案を国民投票に託さない強力な権限が与えられている。
フランスでは、基本的には国会(二院制)による過半数の議決ののち、国民投票による過半数の承認で憲法改正が成立します。

ただし、政府が提出した改正案は、大統領が国会を両院合同会議として召集し、ここで改正案を審議することにしたときは、国民投票は行われず、国会の5分の3の賛成で改正が成立することになっています。

フランスにおける大統領権限の強さを物語るものといえますね。

スウェーデンでは、国会(一院制)が改正案を2回議決しなければなりません。ただし、スウェ-デン国会は解散制度がないので、2回の議決の間に国会の総選挙が行われなければならないようになっています。

そして、国会議員の10分の1が改正案を国民投票にかける動議を提案し、これに議員の3分の1以上が応じた場合、国民投票が行われることになります。

国民投票の必要ない憲法

国民投票のない憲法改正
先進国のなかでも、国民投票ではなく、解散総選挙を必須にすることで事実上憲法改正を国民に問う改正手続をとる国がある。
ベルギーでは、憲法改正の宣言を連邦議会(二院制)が宣言した後、両議院は解散・総選挙を行い、次の国会で両議院の3分の2以上の多数で可決すれば改正が可能となります。

ただし、審議には常に総議員の3分の2が出席していなければなりません。また、戦争中など国家の危機状態の時には改正ができないことになっています。

フィンランドでは、一院制の議会で過半数の賛成により改正案を議決した後、スウェーデン同様次の選挙をまたいで再び審議され、今度は3分の2以上の賛成によって改正が成立します。

オランダも総選挙を挟む点では同様です。まず下院が改正案を議決し、下院は改正案を過半数で議決した後に解散されます。そして、解散後の国会で両院の3分の2の賛成があれば、改正は成立します。

◎関連インデックス 中東・トルコの政治

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▼こちらもご参照下さい。
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