(記事掲載日/2007.05.10)

国民投票法案が衆議院で可決、参議院で審議されている状態で(2007年5月7日現在)、憲法改正議論が本格化してきましたが、さて、他の国の憲法改正手続はどうなっているのでしょう? 先進国を中心に調べてみました。

1ページ目 【日本、そしてイギリスの憲法改正手続とは?】
2ページ目 【アメリカなど連邦制をとる国の憲法改正手続】
3ページ目 【先進国でも国民投票をしないで改正する国がある】

【日本、そしてイギリスの憲法改正手続とは?】

日本国憲法の改正手続

日本国憲法の改正手続
日本国民の常識! 憲法改正の条件覚えていますか?
まず、日本国憲法の改正手続についてみていきましょう。日本国憲法では改正手続についてこのように規定しています。

「この憲法の改正は、各議院の総議員の3分の2以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。」(第96条1項) 

3分の2以上の多数で国会が国民に提案、すなわち「発議」をし、国民投票に改正案をかけて過半数の賛成が必要、ということになっているのですね。

憲法学説では、改正といっても限界があるというふうにいわれます。日本国憲法の基本原理である(1)国民主権主義(2)平和主義(3)基本的人権の尊重を変更し、なくすことはできないとされています。

(1)と(3)についてはともかく、(2)の平和主義については、どこまでの改正が「平和主義を守った」ことになるのか、難しいところがありますね。これからの議論の中心となることが予想されます。

このような改正限界を憲法で設けている国は他にもあります。フランスとイタリアはともに共和制の政治体制は改正できないとしています。

憲法のない国? イギリスの「憲法改正」

イギリスの憲法
イギリスには憲法がないわけではなく、1つの法だけが憲法ではない「不文憲法」が成立している。
さて、世界には「憲法がない国」が存在するといわれています。イギリスがその代表的な国といわれます。

もう少し細かくいうと、イギリスには憲法がないわけではないのです。さらに細かくいうと、憲法という種類の法がないわけではないのです。ただ、「イギリス憲法」という1つの憲法(憲法典)は、存在しないのです。

このような憲法を「不文憲法」といいます。これに対して、日本など大多数の国は、特定の憲法法規を持った「成文憲法」の国であるといいます。

イギリスでは、(1)中世に作られたマグナカルタや名誉革命の時に作られた権利の章典など歴史的な文書、(2)重要とされている裁判の判例法、(3)政治的な重要慣習、(4)重要な法律、などが「憲法」とされています。

たとえば「議会の信任を失えば内閣は総辞職」という議院内閣制の仕組みは、18世紀に生まれた重要な政治的慣習であり、法律としては規定がありません。また、下院の圧倒的優越を定めている議会法という法律は、重要法として憲法に含まれています。

このようなことなので、慣習を変更する法律を作ったり、新たな重要法を制定すれば、憲法改正ができます。この場合、特に特別な多数決は必要なく、単純過半数の多数決で改正ができます。

そのためイギリス憲法は改正手続がしやすい「軟性憲法」といわれています。これに対して日本国憲法のように特別の改正手続を設けている憲法は「硬性憲法」といいます。

しかし、(1)国王の存在(2)議会主義の2大原則を変更することはできないとされています。これもまた不文律ですが、こうしたことによってイギリスは伝統を守りつつ、国民主権と人権保障を実現しているのですね。

イギリス以外の不文憲法の国

イギリス以外にも、不文憲法の国はあります。イスラエル・ニュージーランド・サンマリノなどがそうだといわれています。

イスラエル・ニュージーランドはともに「基本法」として国家の政治システムを規定した法律がありますが、一般の法律と同じ扱いを受けています。

イスラエルは90年代末、労働党政権の時に「憲法制定」が試みられましたが、実現しませんでした。そのため、首相公選制度の導入や、その廃止などが、短期間のうちに行われています。

次ページでは、成文憲法を持っている国の憲法改正手続についてみていくことにしましょう。