文章:石原 敬子(All About「よくわかる経済」旧ガイド)
2009年3月の完全失業率は、4.8%と高水準です。完全失業者は5カ月連続の増加、完全失業者の増加数は過去最高に並ぶほどです。失業者の実態は、「総務省発表の完全失業率よりも悪い」と一般によく言われています。その謎を解くべく、完全失業率という統計の定義を確認してみましょう。

<INDEX>
失業率4.8%、数値の算出方法(1P目)
労働人口と完全失業者とは(1P目)
求職活動していなければ失業者ではない(1P目)
各国の失業率を読むときの注意点(2P目)
有効求人倍率のカラクリ(2P目)
統計に振り回されるのも考えもの(2P目)

失業率4.8%、数値の算出方法

駅
街をゆく1000人に48人が、失業者?
総務省が5月1日に公表した、2009年3月の完全失業率(季節調整値)は、4.8%。この値は、単純に理解するならば、1000人のうちの48人が失業している、ということです。

では、どういう1000人なのでしょう? すべての国民を対象にしているのでしょうか?

近所に住む1000人を思い浮かべてみて下さい。サラリーマンや商店主が働いていますが、他に赤ちゃんもいれば、高齢者もいる、専業主婦もいる、学生もいます。そんないろいろな人のうち、せっせとハローワークに通ったり就職情報サイトにアクセスしたりしている人が48人……ということではなさそうだ、ということに気づくでしょう。

完全失業率という統計は、「労働力人口に占める完全失業者の割合(%)」を示しています。

完全失業率(%) = 完全失業者 / 労働力人口 × 100

労働人口と完全失業者とは

ここで出てくる言葉の定義は、

完全失業者:15歳以上で(1)現在仕事に就いていない(2)仕事を探す活動をしている(3)仕事があればすぐに就くことができるの3つを満たす者

労働力人口:15歳以上の就業者と完全失業者合計

です。では、就業者とは、どういう人なのでしょうか。

就業者:月末1週間に少しでも仕事をした者

完全失業率は、「労働力調査」という政府の統計の中で示されています。労働力調査の調査期間は、月末の1週間です。この間に、賃金を得る目的で1時間以上の仕事をすれば、就業者となります。この期間が有給休暇の取得中だった場合でも、就業者です。

1週間のうちのたった1時間でも、賃金が得られる仕事をしたなら、就業者というわけなのです。「定職に就きたくて職探しをしています。でも生活のために、少しアルバイトをしました」という人も、統計上、「就業者」となります。

では、集計期間中に「ほんの少しだけアルバイトをした」という人がどれぐらいいるのでしょうか。労働力調査で、就業時間の詳細を見てみるとおおよその見当がつきそうです。

2008年度各月の平均で、月末1週間の就業時間が1時間以上という人は6267万人。そのうち、15時間未満という就業者数は188万人です。就業者として数えられている人のうちの約3%の人が、1週間の就業時間が15時間未満だったというわけです。

求職活動していなければ失業者ではない

また、完全失業者の定義でわかるように、仕事探しをあきらめた人(求職意欲喪失者という)は、失業者といいません。

不況のため求職活動を止めていたり、資格を取ろうと学校に通い求職活動をしていなければ、その人は失業者から外れるのです。つまり、計算上、失業率の数値は下がります。見かけ上、失業率が改善したようになってしまいます。

あまりにも不況が深刻すぎて、仕事探しをあきらめる人が増えると、完全失業率では実態が把握しにくくなるのですね。

また、日本の完全失業率は、諸外国よりは比較的低い水準を保っています。各国と単純に比較をして良いものなのでしょうか。その注意点を次のページで考えてみましょう。