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金融、雇用で注目のセーフティネットとは(2ページ目)

国や自治体が雇用や中小企業支援、少子化などの対策としてセーフティネットの拡充をすすめています。セーフティネットの定義や一番大切で必要なセーフティネットとは何かを解説します。

執筆者:石原 敬子

雇用面のセーフティネット、いまできること

家族
労働者は、家計を支えるだけでなく、日本経済を背負った重要なエンジン
雇用面でのセーフティネットは、いわゆるフリーターと呼ばれる人を正規雇用する支援策やニートと呼ばれる若者などが職業的に自立するための支援策が主なものです。

2008年度当初予算の334億円に対し、2009年度予算案では478億円と、予算が大幅に拡大。

具体的には、トライアル雇用制度や年長フリーターを積極的に雇用する企業への奨励金です。その財源の多くの部分は、いわゆる「霞が関の埋蔵金」。掘り出された埋蔵金を助成するなら、企業にはこのお金を有効に活用してもらいたいものです。

労働者1人ひとりが日本経済の発展に貢献していると考えれば、労働力は収益を生む「人的資源」です。就業機会を広げるだけでなく、就業後にその労働者が技術を磨いたりスキルアップをするために有効な投資として欲しいものです。

また、各自治体では、緊急経済・雇用対策として自治体職員の臨時採用や農林業、福祉・介護分野、耐震工事などで雇用創出のためのプログラムを策定しています。本来、景気対策や雇用対策は国の施策ですが、地域の実情や機動性を考えて、各自治体では積極的に雇用の場を提供しています。

場当たり的でないセーフティネットを

これらは、緊急性の対策としては効果的です。しかし、長い目で見た場合に不可欠なのは、やはり職業訓練でしょう。

セーフティネットの充実したスウェーデンでは、失業しても、再教育、再訓練して働けるような形での福祉を提供しているそうです。そのため、企業はむしろ大胆な人員整理もできるとのこと。労働者が次の就労機会を心配しなくて済むからです。

スウェーデンの職業訓練支援は、失業者が受ける職業訓練の教育費は無料で、その間の生活費は職業訓練手当という政府保証があります。社会人が学び直すために通学する場合も、その間の生活費は出世払いで借りられるそうです。産業構造が変化し、新しい職業へのスキルを身につける必要がある時代に、十分な職業訓練のセーフティネットが敷かれているというわけです。

広い視野で考えてみると、少子化対策や中小企業対策のセーフティネットも、日本経済の成長につながるものととらえることができます。一見すると子育て世代の生活救済や、経営困難な中小企業の事業救済に感じます。しかし、少子化対策は、将来の日本経済を支える労働者を増やすことにつながります。日本経済は、中小企業なしには成り立ちません。これらのセーフティネットは、今後の日本経済を支えるために必要な施策といえます。

このように、混沌としたこの時代、さらには将来を憂慮するにつれ、国や自治体のセーフティネットは欠かせません。しかし、もっと重要なことがあるのではないでしょうか。

次のページでは、本当に必要なセーフティネットとは何かを考えてみましょう。
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