文章:石原 敬子(All About「よくわかる経済」旧ガイド)
10年ぶりに、公的資金注入の話題が持ち上がっています。政府では、金融危機が今後さらに広がって、地域金融機関の経営が悪化してしまうのを防ぐために、公的資金の注入を可能にする法律の改正案を国会に提出。10月中にも成立させたいとしています。

さて、この公的資金の注入とは、具体的にどういうことなのでしょうか。

<INDEX>
公的資金は、国や自治体のお金(1P目)
国のお金で、株式を買う(1P目)
民間企業に、国のお金を使うということ(1P目)
金融機能強化法改正とは(2P目)
納税者感情だけでは決めつけられない(2P目)

公的資金は、国や自治体のお金

お金
税金だけでなく、国に納めたお金のすべてと国が保有するお金は、公的資金
実は、公的資金という言葉に、法的な定義はありません。一般的には、公の資金つまり国や地方自治体の持つ資金のことを公的資金と呼んでいます。「公的資金=税金」とよく言われるのは、国や自治体の財政の収入源の主なものは税金だから。他に、国債発行で調達した資金や公的年金の保険料、国民健康保険の保険料なども国の財政収入ですから、公的資金です。

では、公的資金の「投入」や「注入」と表現されるのは、具体的にどういうことなのでしょうか。

国のお金で、株式を買う

投入でも注入でも同じ意味です。資本注入は、企業に資本を投入する、つまり投資をすることを指します。金融機関のみならず、第3セクターへの資本注入という例もあります。国や自治体のお金を企業の事業資金に投下するのが、公的資金の注入です。

サブプライム問題から信用不安に移った今回の金融危機は、日米ともに金融機関への公的資金注入が救済策・予防策の一つとして取り上げられています。

本来、国の財政は、公共事業や福祉、教育、医療など、国の事業のために使うお金です。年度の初めにその年度内に使う予算が国会で決められています。今回、緊急な対応が迫られて「経済への被害が広まらないために、金融機関の経営が揺らがないよう国の資金を提供する」と、公的資金の注入が浮上しました。

その手段に、株式を新たに発行させ、国が株式を買うという方法があります。過去の公的資金注入では、市場で一般に流通しているのと同じ普通株式でなく、優先株式という違うタイプの株式を発行しました。普通株式を発行すると、ほかの株主への弊害があるからです。

民間企業に、国のお金を使うということ

資本注入にあたり、民間企業である金融機関の救済に使って良いのかという点が問題視されています。アメリカではこの点が議論の中心になり、公的資金注入の法案が成立するのに時間がかかりました。

前述のとおり、財政資金の出所は税金だけではありませんが、納税者の感情として「税金を投入して良いのか」という議論に発展します。また、資本主義の本筋から言って、国営企業でない金融機関に国のお金を出すということも、議論を呼びます。この点は、議決権のない優先株式を活用することで、国が経営には関与しないという立場を見せることができます。

税金投入の是非については、金融機関は民間企業ですが、金融システムはある意味で公共的な役割を担っているともいえます。その点を重視し、その健全化・安定化のために、国のお金を使うということで、正当化されます。

今回、公的資金の注入が持ち上がったのは、調整中の金融機能強化法改正案です。金融機能強化法改正案とは、どういう法律なのか次のページで確認しておきましょう。