収入が増えないから、貯蓄をする努力
次に、手取りのうちの貯蓄に回せるお金の比率は、どのように変化をしたでしょうか。可処分所得つまり手取り収入から消費支出を引くと、残りは貯蓄ができる金額です。これをこの統計では「黒字」と呼んでいます。実収入から税金や社会保険料を引いた、「可処分所得」に占める「黒字(実収入と実支出の差)」の変化は、図表4-4のとおりです。
図表4-4 可処分所得に占める、黒字の割合の推移
(二人以上の世帯のうち勤労者世帯、出所:総務省「家計調査」)
このように、40年前に比べて黒字率は増えていますが、気になるのは現在は1997年前に比べて減っている点。この10年間、黒字率はほぼ横ばいの状態です。
裏返せば、手取り収入のうちの使ったお金の割合(消費性向)が見えてきます。消費性向は1998年まで低下してきていましたが、その後は転じて2004年まで増加、以後ほぼ横ばいになっています。
40年前は手取りの8割を消費していましたが、それでもその頃は、年々可処分所得が増えていた時代。一方、最近は可処分所得が増えないため、消費を抑えよう、消費性向が横ばいになっているのでしょう。
家計を40年というスパンで調べていたところ、どうやら10年前に転換期を迎えたようです。最後に、最近10年間の特徴をまとめてみました。
財布のヒモを絞ったこの10年
最近は、給与が横ばいで物価が上昇、「これでは貯蓄もできない」という声も聞かれるほど。いったい、本当なのでしょうか。可処分所得つまり手取り収入は、1997年をピークにしてこの数年は1割以上減った水準で横ばいです。19997年に比べて88%前後の手取り収入となっています。
そして、現在の消費支出は1997年のピーク時に比べて90.3%の水準。手取り収入の減り具合よりも、支出の減り具合の方が少ないのです。黒字の変化を見ても同様。ピーク時の1998年に比べて、2007年の黒字は83.1%程度にとどまっています。
収入が減っているけれど、収入減と同じだけ支出を減らすのは難しいのでしょう。その結果、「減らすなら衣食住から」と基本的な部分に手をつけて節約をしているのでしょう。
ピーク時に比べて大きく減っているのは、被服及び履物(1991年比60.6%)、家具・家事用品(1991年比70.6%)。これらは、10年前とは言わず、既に15年以上も減少し続けています。食料でさえも、ピーク時の1992年に比べて84.1%と、15%以上の減少です。
40年のデータで減少した費目が、この10年では大きく削減されていることが分かりました。
一方、この10年で支出を増やしたのは、光熱・水道、保健医療、交通・通信。ほぼ横ばいなのが、教育、教育娯楽でした。この40年の支出内訳の変化は、この10年でその差が開いているようです。
30年間増え続けた収入の伸びが10年前に止まり、それと時期を同じくして妻の働きが増え、支出を抑えても貯蓄を増やすことが難しいという現状が見えてきました。
さらに、この40年、衣食住という生活の基礎的な支出を増やすことなく、教育、医療、光熱費、通信費の支出が拡大。それもこの10年でその動きがより鮮明になっています。今後もこの支出は増加すると見られる上、食の安全を問う時代にもなり、食費が増加することも考えられます。
家計管理も時代の流れに沿った方法が必要のようです。一昔前と違う収入の方法や、より一層の家計の見直しが求められるのではないでしょうか。
【関連サイト】
・「標準的な家計、知りたい?」
・「2007年の家計簿を覗き見!」
・「ニュースでたどる消費の傾向」
・「家計調査」(総務省統計局)
【関連リンク】
・「景気指標や経済データ検索」