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【2001年再編された中央省庁、いったい何がどうなった?】
中央省庁再編の目玉:内閣府
内閣総理大臣直属の巨大官庁「内閣府」の設置は、内閣総理大臣のリーダーシップ強化を目的とするものだ |
これにより、沖縄開発庁・北海道開発庁は廃止されるとともに、外局として防衛庁・金融庁が置かれ(防衛庁長官は国務大臣)、さらに内閣府内に、複数の官庁の担当を縦断して「縦割り行政」の弊害をなくすために、内閣総理大臣を議長として総合政策立案を行う会議がいくつか置かれています。
そのうち経済財政諮問会議は、財務省にかわリ、総合的な見地から予算編成政策の概要を決定する機関として想定、設置されたものです。
長年主導権を握ってきた財務省にとって代わることができるか、疑問視する声もありましたが、竹中現総務大臣が長年、この会議のまとめ役「経済財政担当特命大臣」を担当し、大胆な経済政策をある程度実行に移すことが実現してはいます。
その他、総合科学技術会議・中央防災会議・男女共同参画会議が設けられ、それぞれまとめ役の特命大臣が置かれています。
巨大官庁:国土交通省
建設省・運輸省・国土庁が1つに再編された巨大な官庁が国土交通省です。すべての社会インフラ(資本)建設と維持を一手に引き受けるところです。3省庁の合同の名残りか、内部部局がちょっと多いような印象を受けます。担当が違うとはいえ、農林水産省は内部部局が5つ(加えて外局2つ)。対して国土交通省は内部部局が12もありますから(加えて外局4つ)、統合の余地がありそうです。
例えば道路局・港湾局はいずれもその国の産業インフラを担っているところがおおきいので(生活道路などは都道府県や市町村の担当にして)、「産業社会インフラ部門局」として統合。また、道路局・鉄道局・海事局・航空局は「交通インフラ部門」として一元化できそうです。
国民の暮らしに関わる厚生労働省
厚生労働省も、2つの省が文字どおり合体した省です。たとえば、高齢者の雇用問題については、単に労働政策という観点からだけでなく、年金政策とのつながりも必要になってくるわけで、そういった意味からこの統合は意味があるといえます。しかし、やはり「対等合併」なだけに部局が多い。統合の余地がありそうです。
特に老健局・保険局・年金局は、結局社会保険についての担当局ですから、一元化できそうなものです。職業安定局と職業能力開発局、医政局・健康局・医薬食品局も一元化できそうなものです。
郵政民営化と地方自治を扱う総務省
郵政省・自治省・総務庁が統合した官庁が総務省です。郵政公社が発足する前、郵政事業庁が総務省のなかにおかれており、今でも郵政民営化の事務担当は総務省です。ゆえに、竹中大臣は総務省にいて、かつ「郵政民営化担当大臣」になっているわけです。総務省のもう1つの大きな仕事は地方自治に関する事務です。地方自治については小泉改革の目玉の1つでもある「三位一体改革」の推進、ということがあります。昨年もめたこの改革論議のために、「改革チームの大番頭」竹中大臣が起用されたむきもあるのでしょう。
また、国家統計の実施・管理も総務省の仕事の1つです。総務省統計局が、各省庁の統計をまとめて検索できる「統計データ・ポータルサイト」を作っています。筆者も活用しています。
ここも内部部局がいくらか整理できそうです。自治行政局・自治財務局・自治税務局は一元化できそうですね。行政管理局と行政評価局の一元化も可能でしょう。
内部部局一元化の意義
「上もの」の省庁は統合された。しかし、内部部局の統合がなければ本当の意味での政府のスマート化、縦割り主義の除去は実現しないだろう |
結局、各省庁が内部部局を引き連れて、そのまま統合してしまったわけです。
なかなか一気にすべてを行うことは困難でしょうから、2000年の中央省庁再編は、それはそれで大きな意義があったと思いますが、これからは内部部局をできるだけ再編・統合し、少なくしていくことが求められるでしょう。
それは、単に余剰人員の削減につながるだけでなく、部局が一元化することで、政策の総合調整が行われやすくなるからです。内部部局の統合は、単にインプット(人員)の問題でなく、効率的なアウトプット(調整された能率性の高い政策)を生むために必要なことなのです。
管轄できる範囲が少ない? 環境省
環境庁が環境省へ格上げされたのも、中央省庁再編の1つの目玉でした。地球環境問題が大きくなるなか、環境行政の役割強化が求められたわけです。環境省は、庁がそのまま格上げされたため、当初は3つしか内部部局がありませんでした。現在は統廃合しながら6つになっていますが、それでも、他の省庁との管轄がかぶっているところがあるのが問題でしょう。
たとえば廃棄物・リサイクル対策部は経済産業省と、環境保険部は厚生労働省と、水・大気環境局は水部門で国土交通省と、それぞれ担当がかぶっています。両者の意見が食い違えば、「新参者」的な環境省の立場は弱いものがあります。
もともと環境庁は環境行政の「調整官庁」として生まれ、所轄としてのしっかりした役割はあまり与えられてきませんでした。しかし今後は、他の省と対等になるように、他省との分担範囲の明確化が求められるところでしょう。
※「内閣が持つ「行政権」って何?」についての参考書籍・資料はこちらをごらんください。
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