2ページ目 【追い詰められてもワンマン発揮した吉田……しかしそれがあだに】
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【混迷と迷走……そして意外な形で決着した「自由民主党・初代総裁」】
「鳩山ブーム」の思わぬ結果……社会党の台頭
左右社会党から早期解散を条件に首相指名投票を受けた鳩山は、首相になるやさっそく衆院解散をします。各地で起った「鳩山ブーム」はすさまじく、鳩山の乗った車が1時間以上支持者らによって立ち往生することもあったといいます。ところが、総選挙の結果は意外に民主党が第1党になるも過半数には及ばず(185議席)、自由党は大幅減(112議席)、代わりに左派社会党が議席を伸ばしました(89議席、右派社会党は1議席増の67議席)。
しかも、解散前から再統一を宣言していた左右社会党が、左派主導のもと正式に再統一。一大勢力となった社会党に対抗するため、民主党内に、自由党との合同を説く声が、次第に広がっていったのです。
策士・三木の保守合同工作とその成功
一方、鳩山民主党に政権を奪われた形の自由党ですが、意外と民主党との合同には乗り気でした。もっとも、吉田学校の生徒たちを除いて。後継総裁となった緒方は現実的な立場から保守政党の合同の利益を考えます。しかし、吉田学校の動きを考えて慎重に動かねばならない。そこで、民主党の三木は自由党の総務会長になっていた大野に働きかけます。
もともと三木と大野は、片や戦前の民政党、片や戦前の政友会、ともに政党解散直前の二大政党の幹部どうしとして仲が非常に悪かったといいます。
しかし、三木は「救国の大業」の実現のため手を貸して欲しいと大野にたくみに要請、ここから自由党と民主党の公式接触がスタートしていきます。
そして55年9月には鳩山・緒方トップ会談が実現。「保守合同」は既定路線となり、問題は「誰が総裁になるか」に絞られました。
総裁問題を棚上げしてまで急いだ自由民主党の結党、その背景
総裁問題については、自由党が強気でいられる理由がありました。衆議院でこそ第3党に転落していた自由党ですが、参議院では依然として大きな勢力であり、衆参両議員を合わせると民主党と2名しか変わらなかったからです。結局、両党の幹事長・総務会長会談で総裁問題はしばらく棚上げ、複数の代行委員によって当分運営することで合意が成立、吉田・佐藤・橋本登美三郎以外のすべての自由党員が新党に合流することになりました(橋本は初期からの佐藤の側近)。
代行委員は鳩山・緒方・三木・大野となり、結党後なるべく早く総裁公選を行う代わりに鳩山が当分首相を続行するということも決まり、55年11月15日、自由民主党の結党式が行われました。
この急速な合同の影には、財界の危機感もありました。経団連など財界団体は「経済再建懇談会」を作り、自由・民主双方均等に献金しながら、社会党へのけん制を行いました。
財界も社会党政権、それも急進的な左派主導の社会党政権ができることを危惧していたため、保守合同をバックアップしたのでした。それほど、当時の社会党には勢いがあったといえます。
初代総裁決定レースを有利に運ぶ緒方、三木も敗北ムードへ
自由党系が鳩山の首相続行を容認したのは、鳩山の政治生命が長くないという一般的な見方でした。そもそも1930年代から政党幹部として活躍していた高齢政治家。しかも追放解除直前、鳩山が脳溢血で倒れそれ以来鳩山の健康問題が横たわっていたこともあり、鳩山は早期退陣になるだろうと思われていました。そうなると当然候補にあがるのは旧自由党系の代表格緒方。三木らは、総裁公選では勝ち目がないと考え、工作に動きます。
また、緒方同様にポスト鳩山を狙う岸は、緒方政権の誕生で再び旧自由党系が復活すると、鳩山系として行動してきた自分に政権が廻ってこないことをおそれます。
こうして、岸が絡みながら、鳩山と、吉田の後継・緒方の権力抗争が再び訪れようとしていました。しかし、「策士」三木も、今度ばかりは勝ち目がない、と観念していたようです。
こうして、総裁公選を実施するとされた56年4月が、緒方派有利のまま、近づいていきました。
一転して大差で選出「初代自民党総裁・鳩山一郎」
ところが、鳩山より壮健と思われていた緒方が、56年を迎えた直後、心臓病で急死します。あまりにも突然のことでした。緒方派のナンバー2、石井光次郎総務会長はなすすべもなく茫然自失。こうなると岸は鳩山の後を待つのみ。結局、一時は泥沼化するかとも思われた総裁公選は、大差で鳩山が勝利し、あっけなく鳩山初代総裁が誕生したのでした。
しかし、年齢と健康からいって鳩山の早期退陣は必至の情勢。早くも党内は岸・石橋・石井・河野・大野・池田らの勢力がしのぎあい、次期総裁をめぐる駆け引きが水面下で始まることになるのでした。
※「自民党の歴史(1)吉田鳩山5年戦争」についての参考書籍・資料はこちらをごらんください。
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