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ライブドアとフジ・ニッポン放送問題の行方(2ページ目)

経済界を震わせ、ワイドショーを賑わせ、社会現象となったニッポン放送問題。結局は旧態依然とした結末とも言えますが、誰が儲けて、誰が損をしたのでしょうか?

執筆者:石原 敬子

お札
ライブドアが手にしたお金は次の買収資金?

ライブドアの儲けと手にしたお金の今後

ライブドアは、そこそこ儲かったのではないでしょうか。

・業務提携
フジテレビへの出資は実現しなかったけれども、フジ・サンケイグループとの業務提携を結ぶことができたので、今後の事業展開次第では将来の儲けも広がると思われます。

・ニッポン放送株の売買による利益
公表されている推定平均取得価格は6,286円、今回フジテレビに買い取ってもらう価格は6,300円、たったの14円の差ですが、1,640万10株を譲渡しますので、14円×1,640万10株=2億2,960万円の儲けになります。

・ニッポン放送株売却で手にするお金
6,300円×1,640万10株=約1,033億2,000万円

・第三者割当増資、440億円
フジテレビから、新たに出資してもらう金額として440億円の増資をします。

ここで楽しみなのは、これまでも証券会社、会計ソフト会社、金券ショップなどを買収してきたM&A戦略を持つライブドアが、大金を手にしたことです。
ニッポン放送売却資金と第三者割当増資の合計で、約1,500億円の資金を得ることになります。時価総額1,500億円の会社を、まるまる買い取ることができるわけです。これまでも、ヤフーを意識した発言が堀江社長から聞かれましたが、ポータルサイト事業を拡大するためのM&A資金になると考えて良いと思います。

ポータルサイトにこだわらず、今回のように親子逆転の企業に目をつけたM&Aを想定するのであれば、まだまだニッポン放送と同じような企業は日本国内に多く存在します。

例えば、東京ディズニーリゾートを経営するオリエンタルランドの大株主は、京成電鉄です。京成電鉄が、オリエンタルランド株を22.8%を持っています。京成電鉄の時価総額は2005年4月19日現在で約1,470億円、オリエンタルランドの時価総額は約65,780億円です。今回ライブドアが手にする資金で、京成電鉄を丸ごと買えてしまう、それほどの額だということ、親子逆転の企業はニッポン放送-フジテレビだけではないというところも今後の注目点になるでしょう。

ライブドアの株主は面白くない

報道などで何度か耳にした「株主の利益」。この顛末では、ライブドアの株主は、かなりのダメージを受けることになります。

ライブドアの今年度である2005年9月期の予想最終利益は、58億円とみられています(東洋経済「会社四季報」より)。
この問題が始まる前の2005年1月末現在、ライブドアの発行済み株式数は64,325万株。ここから計算される、ライブドアの今期予想1株あたり利益は9円01銭でした。

58億円÷64,325万株=9円01銭

ところが、この一連の動きの中で、リーマン・ブラザーズ証券が転換社債型新株予約権付社債(MSCB)を引き受けました。これを全て株式に転換すると(既に一部売却済み)、発行済み株式数が91,529万株になります。
さらに、今回の合意で、フジテレビに行う第三者割当増資の440億円を行うと、発行済み株式数は10億4,100万株になります(株価350円で計算)。
ここから計算される、ライブドアの今期予想1株あたり利益は5円57銭となってしまいます。

58億円÷10億4,100万株=5円57銭

1株あたり利益は、株主に返ってくる利益のモトとなるので、株主にとってはとても重要です。それが、9円01銭から5円57銭になってしまうのです。

では、フジテレビ、ニッポン放送にまつわる損得を、次のページでお伝えします。
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