最新技術で60年以上の耐久性のある建物に再生
隣接地に建つ求道会館。東京都の指定有形文化財に指定されている。 |
現状の建物は傷みも目立ち、スチール製の窓サッシは錆びてしまっていますが、最新の技術を投入して再生します。鉄筋コンクリートは古くなって中性化すると鉄筋が錆びやすくなるので、アルカリ性を回復するための液体を建物全体にしみ込ませるそうです。傷みの進んだ部分は鉄筋コンクリート自体を取り替え、さらに表面の仕上げを塗装し直すことで、今後60年以上もつ建物にリノベーションする計画です。
隣接地には求道会館という、やはり武田五一が設計した和洋折衷の建築物が建っています。浄土真宗の教会として建てられましたが、内部はキリスト教会風で、祭壇部分に和風の六角堂が祀られているという不思議な空間です。大正4年に建てられ、関東大震災による被害と老朽化で閉鎖されていましたが、平成14年に修復工事が完成。今では宗教活動のほかコンサートや講演会などに使われています。
単なる記念館ではなく、実際の住まいとして残したい
リノベーション住宅の完成予想図。アール状の曲線を用いた窓など、現存の建物デザインをほぼそのまま生かした外観となる予定だ。 |
プロジェクトを手がけるアークブレインの田村誠邦さんは、同潤会アパートの再生事業にもたずさわった建築リノベーションの第一人者です。「同潤会は多数の区分所有者の意見をまとめきれず、建て替えという選択肢をとらざるを得ませんでした。でも、大正から昭和初期にかけてはデザインの優れた後世に残すべき建築物が多く建てられており、求道学舎もその一つでしょう。それも単なる記念館としてではなく、実際に住む人が費用を負担し合って残すことに意味があると考えています」と、田村さんは話してくれました。
東京大学の正門に近い現地は、明治期に建てられた木造建築物が残っているなど、開発の波から逃れたどこか懐かしい雰囲気の住宅地です。また、建物の内部は天井の高さが3m30cm~3m60cmもあり、現代の分譲マンションと比べてゆったりとしたつくりになっています。敷地内にはヒマラヤ杉やケヤキの大木もあり、都心でスローライフを味わいたい人にはかっこうのロケーションといえるでしょう。興味のある人はアークブレインのホームページを参照してみてください。
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