■最初から補修を視野に入れて選ぶ
ここまで、外壁と屋根について、自分でもチェックできる方法と、修理・修繕が必要な場合のシグナルについて、説明してきました。屋根や外壁の点検は、毎年、雪の消えるころ、入梅の前、台風に備える夏と、年に3回程度行うとよいでしょう。さらに、大きな台風などがあった場合は、天候が回復した後、点検しておくとより安心です。
このように、大事に至る前に対応できるように、定期的な点検を行うことは重要ですが、もともとメンテナンスの回数が少なく、必要があるときも簡単な方法ですますことができる部材であれば、もっと理想的です。ということは、家を建てるときから、耐久性の高いものを選んでおくことが大切だということになります。
たとえば、外壁の塗装は美観上だけでなく、耐水性や耐候性を保つためにも塗装がされています。塗装の回数が1層というものは少ないと思いますが、3層以上で無機塗装のものであれば、高性能で劣化しにくいので、おすすめです。
屋根については、前述では、瓦や彩色スレートのケースを中心に説明しましたが、屋上などフラットルーフの部分については、防水シートの性能が重要です。特に、屋根は気温や日差しによって温度が変化することで伸縮するため、下地と防水シートがずれることがあります。これについても、1年に数回はチェックしたほうがよいでしょう。住宅メーカーの中には、この点を解決してずれを起こさない工法を最初から取り入れているところもあるようです。
■中古住宅で売るときの価格にも影響
話題が少しずれますが、もし、住宅を売ることになったとき、日ごろの手入れをきちんとして、美観だけでなく、性能も維持されていることが証明できれば、住宅に高い価格をつけることができるかもしれません。
性能表示制度という制度を利用して、評価機関にきちんと評価してもらえば、それを裏付けとして価格設定することも可能なのです。この性能表示制度は義務ではなく、任意の制度で、有料ではありますが、新築住宅でも、既存住宅(中古住宅)でも利用できます。国が指定する「指定住宅性能評価機関」によって、外壁のひび割れや床の傾きなど部位ごとの傷み具合の評価のほか、耐震性や耐火性なども評価内容に加えられます。売り主、買い主、住んでいる人、仲介業者のいずれも、申請すれば、性能表示制度を利用することができるため、住宅を買う人にとっても、この制度はひとつの判断基準になることでしょう。
■新築時の住宅会社選びがもっとも重要
これまで、メンテナンスのしやすい構造や部材を選び、自分でも定期的にチェックをすることが、住まいの性能を維持することにつながることを説明してきました。しかし、最善の方法は、新築時に家を建てた後のサポート体制を備えた住宅会社を選ぶことです。建築後30年、50年といった長い期間にわたって、しっかりしたメンテナンス方法や仕組みをあらかじめつくってある住宅会社なら、そのプログラムに従って、先を見越して対応してくれるはずだからです。
冒頭で紹介した仲介システムでは、これまでに売買された住宅の築年数の平均は、12.5年で、成約価格の平均は4370万円だったそうです。売買価格が高いのは、大きな物件が多いからというわけではなく、91%の物件の建物面積は50坪以下でした。これらの物件共通しているのは、定期的なメンテナンスをしてきたことだと考えられます。
各社いろいろなメンテナンスメニューを用意しているので、住宅会社を検討するときは、こういった視点も検討材料の中に加えて、判断するようにしましょう。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。