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耐震性の高い家を考える(1)地震に強い家(2ページ目)

今住んでいる建物の耐震性に不安を感じている人は多いのですが、どのようにしたら大地震が発生しても倒壊しない家になるのか、その工事費用はどのくらいなのか、リフォームで耐震性を高める方法を探ってみます。

大塚 有美

執筆者:大塚 有美

長く暮らせる家づくりガイド



◆100万円で可能な耐震補強工事も

日本耐震防災事業団は、東京都板橋区防災懇談会で行政初の防災基本条例制定に参加しているNPO法人で、これまでに3000棟近い住宅の耐震診断に関わってきたそうです。代表である、小口悦央さんによると、耐震補強工事の目的はズバリ
「倒れない家をつくること」。一見、当たり前のことのようですが、「倒壊防止」とハッキリ言える耐震補強工事は少ないのだそうです。阪神・淡路大震災以降、横行した悪質な業者が行った耐震補強工事では、耐震性は高めても建物の倒壊防止まではできない工事がほとんどなのだそうです。

小口さんが紹介する「DSG」(ディフェンス・セフティ・ガード)は、住宅金融公庫融資対象、建設省住宅認可済みの「倒壊防止」がうたえる補強工事。たとえば、写真のように、住宅の基礎近くのコーナーを中心に4~6箇所ほど、耐震金具を取り付けることで壁量不足が補え、耐震性がぐんと高くなるものです。金具の取り付けは、家の外側から行うので、短い工期ですみ、面倒な仮住まいも必要ありません。筋交いの入れられない窓などの開口部の多い家や商店などには、最も有効な補強と言えるでしょう。

住宅のコーナー部に金具を取り付け、基礎と土台、柱など強固に接続します左の写真のように耐震補強金具を設置した後にカバーを取り付けたところ

この工法は、数回にわたる実験において、阪神・淡路大震災クラスに匹敵する震度6強の地震でも倒壊しないという結果が得られています。実際に、2003年7月26日の宮城県北部地震でも、施工した14棟すべてが倒壊しなかっただけでなく、家具などの引き出しが移動した程度の揺れですんだという事例報告があるそうです。

気になる費用ですが、住宅や敷地の状況など条件によっても違いますが、現在では
1軒の家の耐震補強工事で約100万円ということ。工期は1~2日ですむそうです。小型車1台分の費用で、金具の材料費と設置工事費がまかなえることになります。この工事をすることで震度6強の地震でも倒壊しない住宅になり、家族の命が守れるのなら、100万円は決して高くないと言えそうです。

また、同事業団では、今後部品の量産化が計れれば価格を下げることも検討しているそうで、最低50万円で「DSG」工事が行えることを目標としているそうです。こうすることによって、耐震補強工事の選択肢が増え、求める人の予算レベルによってさまざまな方法を提供できるようにしていきたいと考えているそうです。

小口さんは耐震診断の必要性についても言及しています。耐震補強工事と言っても、条件はその家によってさまざまです。
その家に最適な補強方法を見つけることは、費用の軽減につながります。家の状態を正確に知ることで、必要以上に不安にかられることもなくなり、前述の悪質業者に引っ掛かるのを防ぐことにもつながるわけです。日本耐震防災事業団では、耐震診断の相談も行っているそうですし、必要ならば診断士や耐震プランナーも紹介しています。同事業団の「DSG」の金具は現在23種類あります。

なお、事業団では施工をしませんが(希望があれば施工会社を紹介することはできるそうです)、相談だけでも受け付けてくれます。

前出の金具と同様に壁面補強をし、基礎と土台、柱などを強く接続するものですが、コーナー部分ではなく、壁面に取り付けた例ですほかの金具と同じように耐震補強金具を設置した後にカバーを取り付けます(写真すべて/日本耐震防災事業団)


◆家族の命を守る住宅は自分の判断で

1981年の建築基準法の改正で、木造住宅の壁の量や柱の太さなどが決められました。しかし、当時、壁は「バランスよく配置」することになっていました。その後、2000年の改正により、建物の階数や使用している材料などによって、それぞれ必要な壁量が決められています。また、住宅性能表示制度もありますので、特に耐震性について数値で高い評価を求めて、建築することもできます。

壁量などについての規定が加えられた、1981年の建築基準法改正以前に建てられた住宅は、注意が必要かもしれません。また現在でも、3階建てや鉄骨造、RC造などでは必要な構造計算書の提出は、木造2階建ての建築にあたっては不要です。ですから、壁の配置のバランスなどが適切かどうかは、単純に建築年数だけでは判断できないこととなります。

さて、これから新築する人は、耐震性などの住宅の基本性能について、住宅メーカーや工務店などから、早い段階で詳しい説明を受けるようにしましょう。基本性能の高い家にするためには、「ビー玉の転がる家!?」でも触れたように、地盤調査を実施し、正しい分析をもとにした設計が必要です。新築であれば、地震の揺れを低減する制震や免震など最新の装置を取り入れ、命だけでなく、日常の暮らしを守る家を建てることもできます。

耐震性を高める方法は、職人さんの経験や勘だけで決められるものではありません。裏付けとなるデータをもとに基礎や構造などを設計する仕組みをもっている会社なら信頼できるでしょう。

現在、新築計画がない人は、早めに耐震診断を受け、必要な場合は補強をしておくことが、
家族の命を守ることにつながるのだと考えてください。国や自治体が何かをしてくれるまで待つのではなく、自分や家族の命を守れ、長く安心して暮らせる家づくりを心がけていきたいものです。

▼関連記事 耐震性の高い家を考える(2) 8割の家が地震で倒壊の危険?!

▼関連記事 耐震性の高い家を考える(3) 耐震工事って何する? 費用は?
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