長期優良住宅/長く暮らせる家

耐震性の高い家を考える(1)地震に強い家

今住んでいる建物の耐震性に不安を感じている人は多いのですが、どのようにしたら大地震が発生しても倒壊しない家になるのか、その工事費用はどのくらいなのか、リフォームで耐震性を高める方法を探ってみます。

大塚 有美

執筆者:大塚 有美

長く暮らせる家づくりガイド



あなたは、現在、自分が住んでいる家が倒壊することをイメージできますか? 日常、そういうことをイメージするのは、なかなか難しいことと思います。私もできません。けれども、ある日突然、自分の身にそういうことが起こる可能性があります。それが地震です。

実際、1995年に起きた阪神・淡路大震災では多くの家屋が倒壊し、6400人以上の方が亡くなりました。地震直後に建物等の直接被害によって死亡した方のうち、住宅や家具による圧死・窒息死による死亡が80%以上と言われています。このような原因で亡くなった方の住宅が耐震性の高い家だったら…、と考えずにはいられません。あれからまもなく9年。その間に、普通の人に受け入れられやすい価格・工期で、既存住宅の耐震性を高める有効な方法はできたのでしょうか? そのあたりを探ってみましょう。

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◆柱が倒れてきて死亡する!

地震によって死亡するケースの中で圧倒的に多いのが、倒れてきた柱などによる圧死や窒息死だそうです。映像や写真で、まるで解体途中の家のようにつぶれた住宅を見たことがあると思います。住宅の耐震性がなければ地震によって住宅がぺしゃんこになり、それによって人が亡くなるという可能性がとても高くなります。もし、阪神・淡路大震災でこんなにもたくさんの家が倒壊しなかったら、これほど多くの方が亡くならずにすんだだろうという説もあるのです。

家屋の倒壊が防げれば、地震の被害は最小限にとどめられることになります。ですから、現在建っている住まいのうち、正しく設計され、高い精度で施工された住宅は問題がないと考えていいでしょう。しかし、既存住宅のすべてが安全とはいいきれないのが現状のようです。

耐震性の高い住宅に暮らすためには、家を建て替えるしか方法はないのでしょうか。既存住宅の耐震性を高める方法はあるのでしょうか。

◆建築基準法の基準だと数百万円

自分の家の耐震性が気になっている人はかなりいるものの、どうすればいいのかわからずにいる人が多いはずです。2002年に国は、耐震改修工事に補助金を交付する制度を創設しましたが、この交付には自治体が工事費を補助した場合に限るなど、いろいろと制約があり、なかなか利用が進んでいないようです(そのなかでも進んでいる自治体は、横浜市と静岡県)。

とはいえ、耐震診断を受けて、現行の建築基準法に沿って耐震補強をするには、外壁や内壁の一部を壊したり、開口部をふさぐようにブレースを取り付けるなど、大掛かりな工事になったり、施工したことで不自由な状態になることが多いようです。加えて、工事費用も数百万円、工事期間も数日から場合によっては数週間に及びます。

これでは、住まいの耐震性に不安をもっていても、すぐに耐震補強工事をすることに二の足を踏んでしまう方も多いでしょう。では、もっと費用がかからずに効果の高い耐震補強をする方法はないのでしょうか? それを調べるためにNPO法人の日本耐震防災事業団に行ってみました。事業団で耐震補強の考え方を伺い、次のページのような耐震補強金具を紹介していただきました。
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